6月30日に国税庁は有識者会議で議論してきたマンションの相続税評価の見直し案を公表しました。
相続税評価額と市場価格(時価)との乖離が約1.67 倍以上の場合に評価額が上がります。
例えば、総階数 43 階、所在階 23 階、築年数 9年、市場価格 1 億 1,900 万円の都内のタワマンで計算すると、従来の評価額 3,720 万円に対して、新しい評価額だと約 7,140 万円となります。
この見直しは、2024 年 1 月 1 日以後の相続等又は贈与により取得した財産に適用されます。
まず、相続税や贈与税における財産の価額は、相続税法の規定により、「財産の取得の時における時価」によることとされています。
これを受け、財産評価基本通達には、「時価とは、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額はこの通達の定めによって評価した価額による。」ものとされています。
一戸建てもマンションも建物と土地に分けて計算します。建物は固定資産税評価額により計算し、土地は一般的に路線価(市場価格の約 80%)を使用し計算します。
マンション(一室)の敷地部分の相続税評価額は、マンション敷地全体の評価額を持分割合(敷地権割合)で按分した金額となります。つまり、タワマンなどの高層マンションほど、より面積は細分化され狭小となり、敷地の評価額は大きく下がることがわかります。
今回の見直しのきっかけともなった最高裁判決(国側勝訴)の概要は次のとおりです。
上記のとおり、乖離率(12.7 億/3.3 億)が約3.8 倍にもなっており、「相続税の負担が著しく軽減」「租税負担の軽減を意図する行為」に該当するとして、国税の処分どおり、鑑定評価額による評価額によるべきと判示された事件です。
区分所有に係る財産の各部分(マンション一室)の価額は、次の算式により計算します。
算式の考え方として、理論的な市場価格を算出し、その金額に 0.6 を乗ずることで、現在は市場価格の約 4 割にとどまっている評価額を 6 割以上に引き上げる結果となります。
なお、評価乖離率は乖離の要因となっている築年数、総階数、所在階、敷地持分狭小度の 4 つの指標に基づいて算出し、その乖離率が一戸建ての平均である約 1.67 未満の場合には上記の算式が「現行の相続税評価額×1.0」となります。
今回の見直し案ではマンション 1 棟買いは対象外、築年数が古いヴィンテージマンションなども対象外となる可能性があり、抜け道が懸念されています。
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