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納税の猶予の特例

第320_2号 2021年1月

1.納税義務の成立、確定、消滅

今回のテーマは納税の猶予となりますが、まずは、税金を納付するまでの過程はどのような流れになるのかを確認します。

国税の納税義務については、納税義務の成立→確定→消滅、という流れになります。3 月決算の会社が納付する法人税を例に挙げると、次のとおりです。

  • ① 決算日(3 月 31 日)に納税義務が成立
  • ② 申告(5 月末まで)により納税義務及び税額が確定
  • ③ 納期限(5 月末)までに納付することで、納税義務が消滅

以上のような流れとなるため、上記②の確定がなければ、税金の納付はなく、また、徴収されることもありません。

2.納期限までに納付しないと?

国税をその納期限までに納付していない場合には、納付するまでの日数に応じて延滞税というペナルティがかかるほか、督促状の送付を受けてもなお納付されないと、財産の差押えなどの滞納処分を受けることがあります。

そこで、これを回避するための制度として、国税の猶予制度というものがあります。

3.猶予制度とは?

国税の猶予制度は、期限内の納税が難しい場合に、申請により税務署長の承認を受けて、期限後に納税ができるようになる制度です。

この猶予制度は従来、次の①、②の 2 つがありますが、令和 2 年 4 月 30 日の新型コロナ税特法の成立・施行により、コロナの影響により収入が大幅に減少している方に向けて、③が創設されました。

  • ① 換価の猶予
  • ② 納税の猶予
  • ③ 納税の猶予の特例(特例猶予)

4.特例猶予の適用状況

令和 3 年 1 月 14 日に国税庁が公表した内容によると、令和 2 年 4 月 30 日から 11 月 30 日までに特例猶予が許可された件数は 250,521 件、税額は1兆575億5,900万円もの金額となっています。

平成 30 年 7 月から令和元年 6 月までの既存の猶予制度が許可された件数が 41,871 件、税額は694 億 8,700 万円であることから、コロナ禍により、大幅に増加したことがわかります。

5.特例猶予の要件と効果

令和 2 年 2 月 1 日から令和 3 年 2 月 1 日に納期限が到来する国税については、次の①、②のいずれも満たせば、申請(猶予を受けたい国税の納期限まで)が可能です。

  • ① コロナの影響により、令和 2 年 2 月以降の任意の期間(1 か月以上)において、
      売上が前年同期に比べておおむね 20%以上減少している。
  • ② 一時に納税することが困難である。

特例猶予が認められれば、延滞税全額免除で 1年間納税が猶予されます。

なお、今回ご紹介した内容は国税に関するものですが、地方税や社会保険料についても同様の制度が設けられています。

以上、申請をご検討される場合には担当者までお問い合わせください。

アトラス総合事務所 税務部門 黒川 洋介
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