引当金とは、将来一定の確率で発生が予測される大きな損失や支出に備えるため、あらかじめ金額を見積り、当期の損失として計上するものです。つまり、将来発生する可能性のある損失や支出を、その原因となる事象が生じた時点で早めに認識して計上するのが引当金です。
レオパレスの決算書には、次のような引当金が計上されています。
アパートの施工不備に係る補償工事費の見積計上額です。今回の建築基準法違反問題での損失に備えるために計上しています。
アパートの一括借上契約では、空室になってもオーナーに家賃を支払うため、その分を見積計上しています。
シェアハウス向け融資で多額の焦げ付きを出したスルガ銀行の決算書には、多額の貸倒引当金が計上してあります。貸倒引当金は貸出金の将来の未回収金額の見積計上額です。
スルガ銀行の 2018 年 12 月末の決算書では、リスク管理債権として次の計上があります。
破綻先債権 | 65 億円 |
延滞債権 | 2076 億円 |
3 ヶ月以上延滞債権 | 113 億円 |
貸出条件緩和債権 | 993 億円 |
合計 | 3248 億円 |
このリスク管理債権合計 3248 億円に対して貸倒引当金は 2045 億円計上してあります。
つまり、将来貸倒れとなる可能性の高いリスク管理債権は 3248 億円ありますが、既に損失として 2045 億円を決算書において貸倒引当金として計上してあるということです。
スルガ銀行の貸出先が自己破産等をして、借入金を支払うことができない状態になると、スルガ銀行は貸出金を貸倒れ処理します。貸倒れ処理するということは、貸出金の残額を損失として処理するということです。しかし、既に貸倒引当金として過年度において損失を見積計上してあれば、その引当金を貸倒れ処理に充当することにより、貸倒れ時に損失が計上されることはありません。
引当金は、「損失が見込めるなら、なるべく多く計上する」という考え方、つまり決算書をなるべく保守的に作成するという保守的経理処理が根本にあります。監査法人は、なるべく保守的な経理処理を要求してきます。
将来の損失に備えた引当金の計上は、大企業だけでなく当然中小企業でも計上できます。ただし、引当金で損失を計上したとしても、税務上損金として認められるのは、貸倒引当金だけです。しかも、税法で定められた損金算入限度額までしか、損金として認められません。
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