会社のお金を不正に引き出して、自らの懐に入れるといった経理不正は、起こってはいけないことです。しかし、この業界に入ってからいくつかの経理不正を目の当たりにしました。大変残念なことでしたが、こういうことも起こりうるということを知ってください。
大会社の課長クラスの方で、定期的に会社近くの飲食店での飲食代が、「接待費」ということで経理に回ってきていました。金額は一回当たり 3万円~5 万円くらいでした。役職柄、そう頻繁に接待があるとは思えないことから、社内調査の対象となりました。
調査員が飲食店に行って、飲食の実態を調査したところ、課長が 1 人で飲食したものを数件合計した領収書を発行したということでした。まとめた領収書の発行を依頼したのは課長とのことです。
「ラーメン屋さんの店長が悪さをしている」との通報があり、調査をしました。調査の結果、架空のアルバイト人件費を計上していました。
店長自ら中国人名のタイムカードを作成して、それを経理に回していました。アルバイトの給与はすべて現金払いであったことから、店長が架空人件費分の現金を着服していたのです。
給与の支払はなるべく振り込みにすることと、外国人アルバイトであれば、在留許可証やパスポートのコピー、履歴書や住民票などを取り寄せることが不正防止となります。
経理担当者と外注先が結託した経理不正です。
商品の加工を委託している外注先の加工単価が、取り決めた加工単価より高かったことから不正の調査に入りました。
経理担当者は外注先から加工賃の水増し請求を依頼されて断りきれず、実際の加工賃より高額な加工賃の請求を黙認して、その支払いをしていたものです。経理担当者は、その見返りとして外注先より車両の提供を受けていました。
経理担当者と仕入先や外注先が結託するこのような不正は、なかなか表面に出にくく、発覚が遅れるケースが多いと思います。請求書の発注部署や納入部署によるチェックや人員のローテーションなどがこれらの不正防止には有効です。
決算日現在の銀行残高証明書は、預金残高の実在性を確認するには、必須の資料となります。
決算時に銀行残高証明書を要求すると、必ず「すみません原本は登録更新のために役所に提出していて、手元にはコピーしかないのですが、これで確認お願いします」と言われていました。
コピーの残高証明書の金額と元帳の預金残高はいつも一致していました。その後、経理担当者の会社預金の使い込みが発覚します。実際には使い込みで少なくなっている預金残高を水増しした金額に合うように残高証明書を巧妙に加工してコピーを取っていたのです。コピーといった例外的な資料で満足することなく、本則通りに原本で確認することが必要です。
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