当事務所で「小さな会社・個人事業者のためのマイナンバー制度の実務がわかる本」を株式会社すばる舎より発行しました。少々長ったらしい題名ですが、マイナンバーの基本書としてタイムリーな発刊となりました。ぜひ、書店で購入していただき、ご一読ください。
今回は来年から始まるマイナンバーの影響について少し考えてみます。
マイナンバーは個々人に特定の番号が付されます。平成28年の所得税の確定申告からマイナンバーである個人番号を確定申告書に記載することになります。
そして、個人に報酬や給与を支払った事業者が作成して税務署に報告する、支払調書や源泉徴収票にも個人番号が記載されます。
税務署に報告された支払調書や源泉徴収票は、税務署の事務処理センターでデータ処理されて、報酬や給与を受取った個人の所轄税務署に送られます。そして、その個人が申告している所得税の確定申告書の記載内容と照合されます。
支払調書と照合して、申告すべき収入がすべて申告されていれば問題ありませんが、申告されていない収入があると問題になります。そのことについて税務署から電話や文書で問い合わせがあったり、場合によっては税務調査となります。
この照合が今までは個人の氏名と住所で名寄せされていたものが、来年からは個人番号で照合されるということです。マイナンバーにより、支払調書と確定申告書が照合しやすくなったということです。
給与の支払者は、1年間に社員に支払った給与の内容を給与支払報告書という形で(源泉徴収票と同じ様式)社員が住んでいる市区町村に報告します。この報告は住民税計算の元資料となります。
給与支払報告書にも個人番号が記載され、個人番号で名寄せしやすくなります。給与支払報告書は、短期のアルバイトやパート社員でも支払者が報告する義務があるため、1年で数カ所のバイト先を渡り歩いた人も個人番号で1年間の収入が集計されやすくなることが考えられます。しかし、いままでも氏名と住所で名寄せされていたわけですので、大きく影響が出るとは考えにくいと言えます。
健康保険・厚生年金の手続きにおけるマイナンバーの記載は、平成29年からの予定です。社会保険にマイナンバーが導入されると「社会保険の未加入事業所が一網打尽にされる」といったことが言われており、マイナンバー導入により最も大きな影響が生じると予想されています。70万ある未加入事業所の財政状態によっては、事業所の存続にかかわる事態となるため、結局のところ慎重な対応にならざるを得ないのではと思われます。
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