昨年の12月30日に平成27年度税制改正大綱が発表されました。安部政権の解散総選挙があったことから例年より遅い大綱の発表となりました。以下、主な改正内容を説明いたします。
平成27年4月1日以後に開始する事業年度から現行25.5%の法人税率を23.9%に引き下げるとともに、法人事業税の税率も引き下げ、法人実効税率は34.62%から32.11%と2.51%引き下げられます。
法人実効税率とは、法人税と法人地方税(法人事業税と法人住民税)の実質的な税金の負担率で、アメリカが40.75%、ドイツが29.59%、韓国が24.2%、シンガポールが17%となっております。
現在、欠損金を9年間繰越して、その間の利益と相殺することができますが、資本金1億円超の大法人は、欠損金と相殺できる利益に制限が掛けられています。
現在は、利益の80%を欠損金と相殺できますが、平成27年4月以後開始事業年度からは利益の65%、平成29年4月以後開始事業年度からは利益の50%となります。
一方、欠損金を繰越せる期間が、平成29年4月以後開始事業年度からは、現行の9年が10年に延長されます(資本金1億円以下の中小法人も対象となります)。
法人が他の法人の株式を保有することにより受け取る配当金については、すべてを課税の対象としていません。配当金は、法人税等が課税された残りの利益を株主に分配することから、受取った法人ですべて収入として課税すると2重課税になるからです。
現行では、出資比率が25%以上の法人からの配当金は全額非課税です。それが平成27年度以降からは、出資比率が33.3%超の配当金は全額非課税、出資比率が5%超33.3%以下の場合は50%が非課税、5%以下の場合は20%が非課税、となります。
NISAとは上場株式等の配当や売却益を非課税とする少額投資非課税制度のことです。このNISAにジュニア版が平成28年からできます。0歳から19歳までの未成年者が対象で、年80万円通算400万円まで売却益や配当が非課税となります。
未成年者がそんなにお金を持っている訳はなく、親や祖父母が資金を未成年者に贈与して運用することになります。
また、既存のNISAについても非課税枠が年100万円から120万円に増額されます。
香港やシンガポールでは株式などの金融資産の売却益には税金がかかりません。そこで富裕層が金融資産を持って海外に移住して、そこで日本から持ってきた金融資産を無税で売却することが可能です。
こうしたことを防ぐために平成27年7月1日以後に海外移住をする場合、出国時に金融資産の含み益に税金がかかるようになります。
対象は出国時点で1億円以上の金融資産を持つ人で、含み益に対して20%の税金が課税されます。
直系尊属(父母・祖父母等)からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税限度額が見直されました。
予定通りに消費税が10%にアップされ、平成28年10月から平成29年9月までに消費税10%がかかった良質な住宅用家屋の取得契約をすると3,000万円までの住宅取得資金の贈与が非課税となります。
良質な住宅用家屋とは省エネや耐震、免震に優れた住宅を言いますが、良質な住宅でなくても上記期間では2,500万円の贈与が非課税となります。上記期間以外においても、平成31年6月までにおいて300万円~1,500万円の住宅取得資金の贈与における非課税枠がありますが、上記期間は特別扱いされているので、大きく贈与するのにはチャンスと言えるでしょう。
直系尊属(父母・祖父母等)が20歳以上50歳未満の子や孫に、結婚や子育てに必要な資金を金融機関に信託等をした場合に、一人につき1,000万円(結婚費用は300万円)までは贈与税が非課税になります。
平成27年4月から平成31年3月までに拠出したものが対象となります。
結婚では、披露宴を含む婚礼費用や新居の家賃や引っ越し費用が含まれ、婚活費用やお見合いの際の食事代などは含まれません。
子育てでは、不妊治療費、出産費用、子の医療費や保育料、ベビーシッター代は含まれますが、おむつやベビーベット、ベビーカーなどの物品の購入費は含まれません。
贈与を受けた子や孫が50歳になっても使いきれずに残っている資金は贈与税が課税され、贈与した側の父母・祖父母等が亡くなった場合は、その時点の資金残高が相続税の課税対象となります(教育資金の贈与では相続税の課税対象とはならないので、この点の取り扱いは異なります)。
なお、教育資金の贈与の非課税制度は、平成31年3月まで延長され、留学の渡航費用や通学定期代等も制度の対象とされました。
海外にあるサーバーから日本の消費者や事業者が電子書籍や音楽・広告の配信を受けても、消費税法上は海外取引とされ消費税が課税されません。これは消費税法上、サービスを提供する側の事務所等の所在地が海外の場合は、海外取引として消費税の課税対象外としているためです。
平成27年10月からは、海外サーバーから配信されても、配信サービスを受ける者の住所地が日本の場合、そのサービスは国内取引とされ消費税の課税対象となります。
配信サービスが消費者向けのものはサービスを提供する国外事業者が消費税の納税義務者として申告納税を行います。
一方、配信サービスが事業者向けのものについては、サービスを受ける国内事業者が国外事業者の代わりに申告納税して、税抜の対価を国外事業者に支払うことになります(リバースチャージ方式)。
以上、主な改正点を説明しましたが、ご不明な点は担当者までお問い合わせください。本年もよろしくお願いいたします。
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