業務主宰役員の給与所得控除額を同族会社の所得に加算するという特殊支配同族会社の規定の適用がこの3月決算から始まります。規定上、「平成18年4月1日以降に開始した事業年度」から適用されるため、この3月決算から実質的に適用されることになるわけです。税金に与える影響が大きいことから、よく理解して対応することが必要です。
特殊支配同族会社の適用判定要件である持株要件や役員要件は、決算日である事業年度終了時の現況で判断されます。ですから3月決算の場合、3月31日が判断の基準日となりますので、間近に迫っています。
業務主宰役員関連者が90%以上の株式を持つと特殊支配同族会社の規定は適用されます。
したがって、11%以上の株式を業務主宰役員関連者以外の人に持たれている会社はこの規定が適用されません。そこで、自社の株式を他人に持ってもらうという発想が自然と出てきます。
他人に株式を持ってもらうということは、その他人が株主になるということです。株主は会社法において様々な権利を持っています。
配当金をもらえる権利、会社が解散したときに残った財産をもらえる権利、株式を会社に買い取ってもらえる権利といった自益権と言われるもの。
株主総会で1票を投じる権利である議決権、取締役などの違法行為の差し止め請求 権、取締役を訴える代表訴訟を起こす権利、会社の帳簿を閲覧する帳簿閲覧権などの共益権と言われるものがあります。
このように株主には様々な権利がありますので、安易に株を持ってもらう訳にはいかないことを十分理解しましょう。
実際に、株を持ってもらった人との関係が悪化すると、その人が株主の権利を主張して嫌がらせをするケースなどよくあることです。
株を他人に持ってもらうには、業務主宰役員関連者が持っている株式を他人に売却するのが一番簡単な方法です。3月決算ですと3月中に売買しなければなりません。単なる形だけの売買ではなく、金銭の受け渡しが明確に証拠として残るような取引にする必要がありあります。また、3月末ぎりぎりで株式を売却すると、後の税務調査で実際に3月中に取引があったのかどうかということが問題になります。そのためには、売買の書類に公証役場で確定日付をとることが有効です。
特殊支配同族会社の規定が適用除外になる基準である、過去3期間の業務主宰役員報酬控除前の所得の平均額が現行の800万円から、倍の1,600万円にこの4月1日以降開始事業年度からなる予定です。
したがって、19年3月期決算では特殊支配同族会社の規定が適用になるのだけれども、20年3月期からは適用にならない会社が多くなります。今回の決算だけのために株の移動をする必要があるのかどうかも、よく検討しましょう。
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