平成18年度の税制改正における役員報酬の扱いの詳細が次第に明らかになってきました。会社にとっては、かなり縛りのきつい改正内容です。以下、現段階で明らかになった内容について説明いたします。
改正法では、「当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与」、つまり「事業年度を通じて毎月同額の役員報酬を支給しないと会社の経費として認めない」と規定されました。
今までも同様な扱いでしたが、キッチリと明文化されたのです。税務署の意思が明確に読み取れます。
事業年度を通して同額であることが必要だと、「では、いつ改訂するのか?」という疑問が生じます。
改正法では、増額改訂については「会計期間開始から3ヶ月以内の役員報酬の改訂」についてだけ認めています。会計期間開始から3ヶ月以内というと結局、通常決算日後3ヶ月以内に開催する定時株主総会で役員報酬の額を改訂するということを想定しているのでしょう。
会計期間開始から3ヶ月以内に役員報酬を改訂する場合、その改訂前と後での定時同額が要件とされています。
中小企業では税務申告書提出の関係で、会計期間開始後(決算後)2ヶ月以内に定時株主総会を開催するケースがほとんどです。そこで、3月決算で2ヵ月後の5月末日頃に定時株主総会を開催して、役員報酬を増額改訂したケースで説明しよう。
改訂前の役員報酬は月額50万円、6月からの改定後の役員報酬は月額80万円とすると、4月と5月が月額50万円、6月から翌年の3月までが月額80万円である必要があるわけです。
つまり、「会計期間開始から3ヶ月以内に役員報酬を改訂したら、その後は決算月までその額を動かすな」ということです。
まったくもって余計なお世話です。図にすると次のようになります。
役員報酬額の減額について、今までは問題にならなかったのですが、減額の仕方も定められました。
まず、増額と同様に会計期間開始から3ヶ月以内に改訂することができます。これは上記で説明したとおりです。
次に、会計期間開始から3ヶ月以内でなくても、会社の経営状況が著しく悪化した場合、その他これに類する理由がある場合に限り、役員報酬を減額改訂することができます。
この場合の改訂方法も、改訂前と改定後で定時同額が要件とされますので、「1回改訂したらその後は決算日まで改定後の役員報酬額を動かすな」ということです。
既に説明した、毎月定額の役員報酬を支払う定期同額の給与のほかに、従業員の賞与と同様に7月や12月に役員に対して支払う給与(賞与)も、そのことを事前に税務署に届け出れば、会社の経費とすることができるようになりました。これが事前確定届出給与という制度です。
以下のことを届け出ます。(事前確定届出給与のことを以下「臨時給与」と言います。)
もう役員報酬のことなら、何でもかんでもすべて事前に教えろといったところでしょうか。
税務署に上記の事項を事前に届け出る必要があります。届け出期限は次の(1)と(2)のいずれか早い日までとなっています。
(1)の「臨時給与に係る職務の執行を開始する日」とは、たとえば6月~11月までの役員の職務の執行に対応する臨時給与を12月に支払う場合は、6月1日になります。
3月決算の場合、(2)は6月30日になりますから、(1)といずれか早い日ということで、臨時給与の届出を6月1日までに届け出ることが必要になります(この場合でも、会計期間開始の日から3ヶ月以内とする経過措置があります。つまり6月30日が届出期限。)。
事前に届出た臨時給与は、その金額を支払わなければなりません。届出た後に急激に業績が悪化して、資金繰りの都合上どうしても支払えないような場合を除いて、届出金額と相違する額を支払った場合には、臨時給与を経費とすることができなくなるようです。
この事前確定届出給与の制度では、役員に支払う定期同額給与以外の給与すべてが対象になりますので、3ヵ月毎、半年毎、年払いの役員報酬も事前届出の対象になります。
非常勤役員に対して年払いの役員報酬を支給している場合には、それを会社の経費とするため、事前確定届出給与に含めて税務署に事前に届出る必要があります。
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