「売上が上がって利益が出ているのにお金がない」という話をよく聞きます。売上が上がって利益が出ていれば、それだけお金が入ってくるはずです。しかし、「お金がない」ということが現実に起きるのです。
仕入も現金で支払い、売上も現金で回収する現金商売の場合を考えてみましょう。
現金で商品を仕入れて、その商品が現金と引き換えに販売されるまでの間、商品の仕入代金は在庫という形で資金が寝てしまいます。
商品を仕入れて販売されるまでの期間が1ヶ月とすると、月100万円の売上で仕入れ値が売値の80%の場合には、80万円の資金が在庫として寝てしまうことになります。
ですから、現在の手許資金が50万円で、月の売上高が更に100万円増えると、まず在庫の資金として80万円が必要になるわけです。手許には50万円の資金しかないわけですから借入などにより在庫資金を調達しなくてはなりません。
商品代金の回収条件が「末締め翌々月払い」とか仕入代金の支払条件が「末締め翌月払い」といった取引条件で商売をするのが掛け商売です。
回収条件と支払条件の内容次第で、資金に与える影響が異なります。
例えば回収条件が「販売後2ヶ月で回収」、支払条件が「仕入後1ヶ月で支払」の場合を考えてみましょう。
仕入代金は売上代金の80%とします。
月の売上高が100万円増加すると、売上代金は2ヶ月分の200万円常に資金が寝ます。
一方、仕入代金は1ヶ月分の仕入代金80万円(100万円×80%)の資金が留保できます。
すると、月売上高100万円の増加により回収されないで寝る資金は200万円で、支払わずに留保できる仕入代金は80万円ということになり、差引120万円の資金が不足することになります。
回収条件が「販売後1ヶ月で回収」、支払条件が「仕入後2ヶ月で支払」の場合に、月売上高が100万円増えると次のようになります。
回収されないで寝る資金は1月分の100万円、支払が留保される仕入代金は2か月分の160万円(100万円×80%×2ヶ月)で、差引60万円の資金の余剰ができます。
回収条件が「販売後1ヶ月で回収」、支払条件が「仕入後2ヶ月で支払」、在庫は仕入金額の1か月分とする。
回収されないで寝る資金は1月分の100万円、支払が留保される仕入代金は2か月分の160万円、在庫は仕入代金の1か月分の80万円資金が寝てしまいます。
すると、月売上高が100万円増えたことにより、寝る資金は回収代金の100万円と在庫の80万円、支払が留保される仕入代金が160万円で、差引20の資金が不足することになります。
「回収条件」と「支払条件」と「在庫」が運転資金分析の3要素となります。
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