エンロンの倒産と、それに続いたワールドコムの不正会計事件により、ニューヨーク市場は大荒れの状況です。その影響が東京市場にまで及んでいます。ワールドコムの不正会計とは、一体何だったのでしょうか。
ワールドコムでは2001年の決算と2002年にかけて、本来「ラインコスト」として費用として計上しなければならないものが、固定資産として計上されていたというものです。
その額は、2001年で約3,570億円、2002年の3ヶ月間で932億円になるということです。
費用とは人件費や交通費のように支払ったときやサービスを受けたときに、全額を収益から控除するものです。
一方、資産とは支払ったときやサービスを受けたときに、全額を収益から控除しないで、固定資産や投資資産などで一旦計上しておき、必要に応じて収益から控除するものです。
ですから、費用が増えれば増えるほど収益から費用は引かれますから、その結果利益は減少します。逆に資産は増えても、すぐに費用は増えませんから、利益が急激に減ることはありません。
ワールドコムは本来ラインコストとして費用となる数千億円の金額を固定資産として資産計上していました。収益から数千億円費用として引かれずに、資産として計上されていたわけですから、会社の利益は膨らみます。
そして、この膨らんだ利益を見て投資家はワールドコムの株式を買うわけですから、たまったものではありません。この不正経理をしていた期間において、監査を担当していたのがエンロン社を監査していたアンダーセン社であるのも皮肉なものです。
現行の日本の会計制度においても、ある支払を費用とするのか、資産とするのかは、企業の裁量に任されているものがあります。
つまり、費用でも資産でも自由にできるものがあります。
それは、商法上の繰延資産といわれるもので、代表的なものが開発費、試験研究費、開業費などです。
開発費とは、「新技術の採用、新資源の開発、新市場の開拓のために支出した金額、および現に採用している経営組織の改善や生産能率の向上または生産計画の変更などのために支出した金額のうち、経常的に支出されるものではないもの」です。
この定義に当てはまる支払であれば、全ての金額を開発費として資産計上することも、また全額を費用とすることも自由にできます。さらに、一旦開発費として資産計上した金額はいつでも、全額でも、またその一部の金額でも費用として処理できます。
試験研究費や開発費も同様の扱いで、非常に便利な支払いということができます。
税務上も、以上の扱いでまるっきり問題ありません。
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