消費税の簡易課税
第076_2号 2000年8月
1.消費税の簡易課税制度
消費税の簡易課税制度は、中小事業者の事務負担の軽減を意図して、課税売上だけで消費税を計算し、申告できる制度です。
適用要件は次の通りとなります。
- ①基準期間(前々期)の課税売上高が2億円以下であること。
- ②「消費税簡易課税制度選択届出書」を適用課税期間の前課税期間までに所轄税務署に提出していること。
- ③2年間は継続して適用しなければならないこと。なお、資本金1千万円以上の基準期間のない新設法人(設立第1期目と第2期目)については上記1の要件はいりません。
2.みなし仕入率
仕入税額控除は原則として事業区分に応じた課税売上高に対して次のような仕入率を乗じた金額を実際の課税仕入とみなして計算されます。
- ① 第一種事業・・・90%
- ② 第二種事業・・・80%
- ③ 第三種事業・・・70%
- ④ 第四種事業・・・60%
- ⑤ 第五種事業・・・50%
したがって消費税額等(消費税及び地方消費税)は課税売上に対して次のような割合になることになります。
- ① 第一種事業・・・(1-90%)×5%=0.5%
- ② 第二種事業・・・(1-80%)×5%=1.0%
- ③ 第三種事業・・・(1-70%)×5%=1.5%
- ④ 第四種事業・・・(1-60%)×5%=2.0%
- ⑤ 第五種事業・・・(1-50%)×5%=2.5%
たとえば第三種事業で課税売上が1億円であれば、次のように消費税額等が簡単に求められます。
1億円×1.5%=150万円
3.事業区分
簡易課税の計算は簡単なのですが、少々めんどうなのはみなし仕入率を適用する事業区分の判断です。
- (ア) 第一種事業
- 卸売業(他の者から購入した商品をその性質・形状を変更しないで他の事業者に販売する事業)
- (イ) 第二種事業
- 小売業(他の者から購入した商品をその性質・形状を変更しないで消費者に販売する事業)
- (ウ) 第三種事業
- 農業、林業、漁業、鉱業、建設業、製造業(製造小売を含む。)電気業、ガス業、熱供給業、及び水道業(加工賃等の役務提供の事業を除く)
- (エ) 第四種事業
- 飲食店業、金融、保険業等、他の事業区分のいずれにも該当しない事業
- (オ) 第五種事業
- 不動産業、運輸通信業、サービス業
事業区分の判断は慎重にしなければなりません。
例えば、「建設業の許可を受けているから第三種事業に該当する」と単純に考えると判断を誤るおそれがあります。
建設業でもトビ工事などは加工賃等の役務提供の事業と判断されて第四種事業とされます。解体工事なども単独で行うと第四種事業とされますが、第三種事業に該当する住宅等の建築業者が工事の一環として行うと解体工事部分も第三種事業に含めてよいことになっています。
税理士 坂井洋一氏