大企業では所有と経営が分離していることから、経営者と会社との間の取引は自由に行えません。しかし中小企業においては経営者が株主で、「会社は俺のもの」という感覚で会社との取引は自由に行えます。
会社と経営者との初めての取引が会社設立時の出資取引です。つまり資本金を会社に入れる取引です。会社設立後、会社に資金を入れる方法としては、会社に経営者が「資金を貸し付ける」、「増資により資金を注入する」という2つの方法があります。
資金を貸し付けると、会社では経営者からの借入金となり、マイナスの財産が多くなって決算書が歪みます。
一方、増資により資金注入すると返済不要の資金が増えて決算書は健全さを増します。
会社に経営者が貸したお金は自由に返済してもらえます。しかし、会社に貸したお金を超えて会社から資金を引き出すと、今度は会社が経営者に資金を貸し付けたことになります。会社の経営者への貸付金となり、会社は税法上強制的に利息を計上する必要があるのです。会社に役員への貸付金が多額にあると金融機関からの融資審査に支障をきたします。
増資により注入した資金を減資により経営者が取り戻すこともできますが、手続きが煩雑で現実的ではありません。
自宅の一部を事務所として会社に貸し付けることはよく行われます。会社と経営者との間で賃貸借契約を締結して、常識の範囲内での家賃設定をすれば問題ありません。
経営者が所有する不動産を会社に売却する場合、時価で売却すれば経営者の買値と時価との差額だけ譲渡所得が発生します。
時価より低く売却すると時価と売値との差額が会社で受贈益として計上されます。
時価の2分の1未満の金額で売却すると、経営者は時価で売却したとみなされて課税されます。時価の2分の1以上で売却すれば買値と売値との差が譲渡所得となるだけです。
時価より高く会社に売ると、時価と売値との差額が会社から経営者へ役員賞与を支給したとして扱われます。
経営者の不動産を会社に売却するのではなくて、現物で資本金に充てる現物出資をしても、経営者がその不動産を時価で会社に売却したとする扱いになり、経営者に税金が課税されます。
会社が所有する不動産を経営者がもらう方法として、経営者の退職金としてもらうことができます。その不動産の時価が退職金の金額とされ、会社はいったん経営者に金銭で退職金を支給して、そのお金で会社の不動産を買ったと税務上扱われます。したがって、会社は不動産の買値との時価との差額が固定資産売却損益として計上されるのです。
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