民主党が政権をとり、マニフェストどおりに税制が改正されると、中小企業に対する税金が優遇されます。法人代表者の給与の一部を法人の損金に算入しない特殊支配同族会社の規定の廃止、資本金1億円以下の中小企業に対する法人税率の引き下げ(所得800万円以下に対する税率18%を11%に引き下げ)と、中小企業に対する税金が有利になります。今回は、このような改正を受けて、会社を分社化することによる節税メリットを説明します。
現在会社で行われている業務の一部を切り離して別の会社に移管することを分社といいます。会社の営業部門と製造部門を切り離して製造部門を新会社に移管したり、会社の事務部門を別会社にしたりして分社化します。
分社の方法としては、会社分割という方法もありますが、別会社を新たに設立して分離する業務を新会社に人員ともに移管する方法が一般的です。
新会社を設立する際に、会社が出資すれば子会社として分社化することになり、会社のオーナーが出資すれば新会社は現在の会社と兄弟会社になります。
100%子会社を設立すれば、親会社と子会社を合算して申告できる連結納税を採用できる点が税務上の扱いで異なります(親が黒字で子が赤字の場合、相殺して納税できます)。
800万円以下の所得に対する法人税率が改正後は11%、800万円超の所得に対する税率は30%ですので、分社化すると2社で合計1,600万円(800万円×2社)の所得に対して11%の税率が適用できることになります。
法人事業税も、所得により税率が区分されていますので、低税率が適用される所得が単純に倍になりますので、節税になります。
資本金が1,000万円未満の新会社を設立して分社化をすると、新会社は設立1期と2期が消費税の免税事業者となります。
また、新会社が消費税の課税事業者になった場合でも、2期前の課税売上高が5千万円以下であれば、簡易課税を選択して消費税を節税できる場合があります。
交際費が法人の損金に算入されるのは、600万円までの金額の90%です。分社化により法人が2社になると倍の1,200万円までの交際費の90%が法人の損金になります。
分社化により2社の役員となれば、現在の会社と新会社で役員退職金をそれぞれ受給することが可能となります。退職金は、法人の損金になるとともに、個人の税金も優遇されているので節税になります。
以上のとおり分社化は節税になりますが、形だけの分社化ではなく、経営の実態を備えた分社化であることが必要です。
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