アトラスNEWS ~Monthly 税務・経営・節税情報~

法人で不動産投資

第182号 2009年7月

1.はじめに

昨年のリーマンショック以来、不動産市況は悪化の一途を辿っています。「今こそ不動産投資のチャンス」と考えている方も多いことでしょう。

「不動産投資は個人でするもの」と考えるのが一般的かもしれませんが、法人ですることにより様々なメリットがあることも理解しましょう。

2.法人は税率が低い

個人の最高税率は50%です。不動産貸付業には事業規模により事業税も課税されますので、そうすると50%以上の税率となります。一方、資本金1億円以下の法人であれば税率は40%未満でお得です。

3.所得の分散ができる

個人で投資不動産を所有すると、投資利益がすべて個人に帰属してしまいます。法人で所有すると投資利益は法人に帰属しますが、給与の支給を通じて法人の構成員に所得を分散することができます。

4.売却損でも有利

個人で不動産投資をしていて、将来その不動産を売却することも予定されます。売却により損失が出た場合には、税金の扱いが個人と法人では異なります。

個人では投資不動産の売却による損失を不動産所得や給与所得と相殺することはできません。

一方、法人では個人のような所得の区分がありませんので、売却損は法人の所得から減額されます。つまり、不動産賃貸収入などの他の所得と相殺され、法人の税金が少なくなるのです。また、売却損で法人が赤字になったとしても、その赤字は次期以降7年間繰り越して、その間の黒字と相殺することができます。

5.売却益が出ても

投資不動産の売却により利益が出た場合、個人の場合は20%(5年超所有)の税率で課税されます。一方法人は、他の所得と合算されて法人税率が適用されるため、この点では個人が有利となります。

しかし法人では、売却のタイミングに合わせて事業年度を変更したり、役員退職金を活用したり、さらには合併等の組織再編などにより税金対策がしやすいといえます。

6.相続がしやすくなる

個人で投資不動産を所有すると、個人の他の財産と一緒に相続税の対象となります。自らが所有する投資不動産と、そして投資不動産から得て蓄積した預金も相続税の対象となってしまいます。

法人で投資不動産を所有した場合は、個人が所有するその法人の株式が相続財産となって相続税の対象となります。

したがって、法人の株式を計画的に親から子供に贈与や譲渡することによって、相続税対策がしやすくなります。

また投資不動産の利益を、給与により配偶者や子供に分配することにより、相続税の納税資金を計画的に準備することもできます。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士・行政書士 井上 修
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