決算書を理解するための基本的なポイントを解説します。
損益計算書で計算された利益は、貸借対照表の純資産の部に溜まります。純資産の部は、資本金と毎年の利益の累積額で構成されます。
貸借対照表 | |
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資産 | 負債 |
純資産 |
損益計算書 | |
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費用 | 収益 |
利益 |
「当期は2千万円の利益を計上したのだけれども、それは決算書上どこへ行ってしまったのですか?」と社長さんから聞かれました。上記の図からも分かるように、損益計算書で計算された利益は、貸借対照表の資産や負債の増減として表されます。これを解明するには、貸借対照表の前期と当期を比較して、各科目の差額を出す必要があります。
損益計算書は基本的には「収益-費用=利益」の構造ですので分かりやすいといえます。これに対して貸借対照表は、損益計算された利益が預金の積み立てや固定資産の購入や借入金の返済など様々な形に変化していきます。
さらに、銀行から融資を受けた場合には、利益に関係なく預金が増えると同時に借入金が増えるといった取引もあります。
このように、貸借対照表はパッと見て分かるようなものではなく、ジックリ見ないと分からない決算書類です。
貸借対照表では、まず売掛金と買掛金のバランスを見ましょう。売掛金は売上代金の未回収額で、買掛金は仕入代金の未払い額です。
この売掛金と買掛金の額がおおよそ見合った額である場合は、「売上で回収したお金で仕入の代金を支払える」状況で、資金繰りにほとんど影響はありません。
一方、売掛金>買掛金の場合は、売上代金の回収条件が仕入代金の支払い条件より長いことが考えられます。ということは、「売上でお金を回収するより早く、仕入代金の支払がある」状況で、資金の支払いが先行してしまいます。このような状況で売上高が増えると資金繰りはどんどんきつくなり、借入金に頼らざるを得なくなります。
反対に、売掛金<買掛金の場合は、売上代金の回収条件が仕入代金の支払い条件より短く、「仕入代金の支払いより、売上代金の回収の方が早い」状況となります。この場合は、売上高が増えると資金はどんどん溜まって行き、資金繰りは楽になります。
売掛金と買掛金のバランスが極端だと、その決算書は粉飾している可能性があります。最も手っ取り早い粉飾の手法としては、損益計算書の売上高を過大に計上し、同額の売掛金を貸借対照表で過大計上します。そうすると、極端に売掛金が買掛金に対して大きくなるのです。
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