10月のリーマンショックから国内景気は一挙に落ち込んできました。不動産、建設業界においては、すぐさまその影響が出ました。他の業種においても影響は出始めていますが、上場会社(3月決算)の新年度予算が実行される4月以降の仕事が見えないという経営者の声がかなり多く聞こえてきます。まさに企業経営の正念場となります。
景気悪化の影響は売上高の減少として顕在化します。売上高の減少とともに発生額が少なくなる費用を変動費といいますが、困りものは発生額が少なくならない固定費です。売上高から変動費を引いた額を粗利とすると、今後の予想売上高に粗利率を掛けて求めた予想粗利額が固定費を上回らないと利益は出ません。利益を出すためには、売上増は見込めない状況ですので固定費を引き下げるしかないのです。
予想売上高×粗利率=固定費の状況が利益トントンの状況です。利益トントンに必要な売上高は、必要売上高=固定費÷粗利率で計算できます。しかし利益がトントンでは借入金の返済ができません。借入金返済に必要な売上高は、
で計算されます。
以上の計算式を見ても、取引先との関係もなく自らの手で変更可能な項目は固定費となります。したがって、その代表である人件費と家賃の見直しは必須となります。
銀行借入をすると手許資金が潤沢になります。お金には、自己資金とか借入資金といった名前が付いていません。そうすると資金があるため、ついつい固定費削減の手綱が緩みがちです。本来削減すべき人件費を銀行借入金で支払っているような状況では、資金の枯渇は時間の問題です。リストラを徹底して、業績回復の可能性を十分検討したうえで借入は実行しましょう。借入金がなければ廃業も可能です。借入金が返済できないと倒産になってしまします。
固定費の削減と言うのは簡単ですが、いざ人員削減を実行するとなると容易なものではありません。日々顔を合わせている同志の肩たたきをするわけですから尋常ではいられません。
また、オフィスを縮小移転するのも格好の良いものではありません。仕入先や外注先に支払条件の変更を申し入れて資金繰りを改善するにも、銀行に返済条件の変更を申し入れるにも経営者自ら取引先や銀行に頭を下げる必要があります。恰好をつけていては厳しいリストラなどできないわけです。
勘や期待感に頼った経営判断は危険です。会社の実態を正確に反映した会計数値を元に経営判断をしましょう。
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