貸借対照表は、プラスの財産である資産と、マイナスの財産である負債と、両者の差額である資本の3つで構成されています。 資産は、大きく流動資産と固定資産と繰延資産に分かれています。今回は、繰延資産にスポットを当てて説明します。
資産とは、プラスの財産であると説明しました。つまり、現金や預金であったり、売却したり回収したりすれば、お金が増えるものです。売掛金を回収すればお金が増え、土地建物を売却してもお金は増えます。また有価証券を売却しても同様です。このような資産を財産価値、換金価値があると言います。
しかし繰延資産には、この財産価値、換金価値がないのです。つまりお金に換えることのできない資産なのです。そういう意味で資産の異端児です。
繰延資産とは、「その支出の効果が1年以上に及ぶもの」を言います。
創立費は繰延資産です。創立費とは、法人を設立するためにかかった費用を言います。法人を設立するために支出した登記費用などは、会社を設立したときにだけかかる支出ですが、その支出によってできた会社はずっと存続します。したがってその支出の効果は会社が存続する限りあるということができます。
新宿から渋谷まで電車に乗るための支払は、渋谷に着いたらその支払の効果は終結します。繰延資産は、そうではなくてその支払の効果が1年以上に及ぶものを言うのです。
支出の効果が1年以上続くものをなぜ資産とするのかというと、1年以上続く効果によりもたらされる売上と対応させる費用にするためです。このように、売上との対応という損益計算の技術的な理由で資産に計上するものですから、財産価値など元からないのです。
繰延資産には、会社を設立後開業のために特別に支出した費用である「開業費」。新製品、新技術の試験研究のため特別に支出した費用である「試験研究費」。新技術、新事業開始のために特別に支出する費用である「開発費」。新株発行のために支出した「新株発行費」。同じく社債発行のために支出した「社債発行費」などがあります。
上記の繰延資産の税務上の扱いは特別です。税務上は、支出時に全額費用とすることもできるし、資産計上して費用にしたいときにいつでも費用とすることができるのです。非常に便利な存在です。
同業者団体の会館建設費用負担金、商店街のアーケードの負担金、建物賃借時の礼金、ノーハウの頭金、自社製品販売のための看板・ネオンサインの贈与、出版権設定の対価、同業者団体等の加入金、プロスポーツ選手との専属契約等のための契約金。
これらの繰延資産は、税務上の繰延資産と言われ、支出時に全額費用とすることはできず、数年間に亘って費用化します。
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