日本から海外の支店や駐在所へ派遣されて、外国の社会保障制度に加入することがあります。しかし、短期滞在のため、年金の受給要件期間を満たさないことが理由で、年金保険料が掛け捨てとなってしまうということがあります。
このような不都合を避けるため、日本と諸外国との間で社会保障協定が結ばれています。日本は、アメリカ、韓国、イギリスなど6カ国と協定を結んでいます。
平成18年度中には、さらに日本とベルギー、フランスとの間でも、社会保障協定が結ばれています。
協定の内容は、主に日本と外国で、それぞれの国の社会保障制度に重複して加入すること、及び保険料が掛け捨てとなることを防ぐ内容となっています。今までは、海外に派遣された従業員は、日本の社会保障制度に加入しながら外国の社会保障制度にも加入していました。保険料も2つの国で支払っていたわけです。
しかも短期の海外派遣なので、派遣先国の社会保障制度における年金受給要件期間を満たさないため、年金が受給できないといったことがありました。各国との社会保障協定でこれらの点が改善されました。
今までは、外国に派遣されると、日本の社会保障制度と外国のそれに二重に加入しなければなりませんでした。
社会保障協定により、5年以内と見込まれる海外派遣については、派遣元の社会保障制度のみの加入で済むようになりました。5年を超える派遣については派遣先の社会保障制度に加入することになります。
例えば、4年間フランスへ派遣される場合は5年以内の派遣になりますので、日本の社会保障制度の加入となり、フランスでの社会保障制度加入は不要となります。
今までは、外国へ派遣されて外国の社会保障制度に加入して保険料を支払っていたけれども、年金の受給要件期間を満たさないため、保険料が掛け捨てになるといったことが多くありました。
社会保障協定により日本での年金加入期間と外国での年金加入期間が通算されることになりました。ただし、イギリスと韓国と結んだ協定にはこのような内容は含まれていません。
例えば、日本の年金保険料を22年間払い、アメリカでも4年間保険料を支払ったとします。日本の年金受給要件期間は25年、アメリカは10年です。
アメリカとの社会保障協定発効前は、それぞれ25年、10年加入しなければ日本とアメリカの年金をどちらとも受給することができませんでした。しかし、協定発効後は、両国の払込期間を通算できることになりました。通算して26年なので、日本の年金もアメリカの年金も受給することができるようになったわけです。
日本の社会保障制度に加入して、協定相手国の社会保障制度を免除されるためには、「日本の医療保険制度に加入していること」や「5年以内の派遣であること」などの条件があります。これらの条件は、国により違いがありますので注意が必要です。
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