昨年12月に「会社法制の現代化に関する要綱案」が発表されました。現行商法の大改正となる内容です。身近な改正点について以下解説します。なお、この改正は来年4月1日を予定しています。
現行の商法では合名会社、合資会社、有限会社、株式会社がありますが、この中から有限会社がなくなります。つまり、新たに有限会社を設立することができなくなります。
現在ある有限会社は、経過措置によりそのまま「有限会社」の商号を使用することも認められ、また株式会社への組織変更をするための経過措置も同時に設けられます。
最低資本金制度が廃止されます。1千万円なくても株式会社が1円から設立できるのです。現在、特例で認められている新事業創出促進法により設立した資本金1千万円未満の会社も、5年内に資本金を1千万円にする必要はなくなる予定です。
また、新たに合同会社という会社形態が新設されます。合同会社は合名会社や合資会社と同じような組合的規律ですが、責任が出資額までに限定されている有限責任社員のみの会社形態です
設立手続きも簡便化され、銀行から保管証明書を取らなくても、預金の残高証明書だけで済むようになります。
株式会社には、株主総会、取締役会、監査役会、取締役、監査役といった会社の機関があります。新しい会社法では、これらの機関を、会社の実態に合わせてある程度自由に組み合わせることができるようになりました。「株式を譲渡するには株主総会(取締役会)の承認を要する」といった規定を設ける「株式譲渡制限会社」においては、取締役会を設置しないことができ、取締役の員数も1人で足りることになります(現在は最低3人必要)。そして、監査役の設置も任意となるのです。つまり、現行の有限会社に近い機関設計ができるのです。
「株式譲渡制限会社」においては、定款をもって取締役および監査役の任期を最長選任後10年以内とすることができます。
現在は、取締役2年、監査役4年の任期ですから、かなり長くすることができるわけです。そうすると、任期満了ごとに役員の変更登記をする手間と費用が省けることになります。司法書士泣かせの改正ということができます。これも、役員の任期に制限のない有限会社の規定に近い扱いとなったわけです。株主は社長だけといった会社では、役員の任期なんか関係ないわけですから、中小企業の実態に合った改正と言えます。
株主配当や役員賞与の支給、積立金の取り崩しなどについては、定時株主総会において利益処分案の承認決議が必要でした。しかし、改正会社法ではこれらの決議は株主総会の決議により行うこととされ、つまり臨時株主総会によっても決議することができるようになりました。したがって、利益処分案自体の必要性がなくなったわけです。
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