源泉徴収あれこれ
第125_1号 2004年09月
1.はじめに
源泉徴収制度は、給与や配当などの支払者が所定の方式により税額を計算して、支払の際にその税額を天引きして国に納めるという制度です。諸外国でも一般に行なわれている制度で、英語ではWithholdingと言います。
2.給与所得の源泉徴収
- (1)源泉徴収義務者
- 源泉徴収をしなければならない者を源泉徴収義務者と言います。常時2人以下の家事使用人(お手伝いさん)のみに対して給与の支払いをする個人は、給与所得の源泉徴収義務はありませんが、それ以外の個人、法人、組合、学校等であってもすべて源泉徴収義務者となります。
- (2)納付期限
- 源泉徴収した翌月10日までに納付するのが原則ですが、給与の支給人員が常時10人未満である場合は、年2回納付の特例があります。
- この特例の対象となるのは、給与、退職金及び弁護士・司法書士・土地家屋調査士・公認会計士・税理士・社会保険労務士・弁理士等に支払った報酬にかかる源泉所得税だけです。デザイナーやライターなどへの報酬にかかる源泉所得税はこの特例の対象にはなりませんので、注意が必要です。
- (3)納付書
- 「給与所得、退職所得等の所得税徴収高計算書」です。
3.退職所得の源泉徴収
- (1)源泉徴収義務者
- 給与所得の場合と同じです。
- (2)死亡退職金
- 死亡退職金でその全額が相続税の課税対象に算入されるものは所得税がかかりません。それ以外は遺族の一時所得となりますが、通常は前者の扱いです。
- (3)解雇予告手当
- 労働基準法第20条の解雇の予告の規定による予告をしないで、使用人を解雇する場合に支払う解雇予告手当は退職所得とされます。
- (4)納付期限、納付書
- 給与所得の場合と同じです。
4.報酬・料金等の源泉徴収
- (1)源泉徴収義務者
- 給与の支払者でない個人及び常時2人以下の家事使用人(お手伝いさん)のみに対して給与の支払いをする個人は、源泉徴収義務がありません(ホステスへの支払いだけ義務あり)。それ以外の個人法人等はすべて源泉徴収義務者です。
- (2)納付期限
- 給与所得で説明した税理士等の報酬以外は、納期の特例の対象ではありませんので、源泉徴収した翌月10日までに納付する必要があります。
- (3)納付書
- 「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」です(税理士等の報酬は除く)。
5.納期限にご注意
源泉所得税を納期限までに納めないと「不納付加算税」というペナルティーが課されます。自主的に納期限後に納めて税額の5%、税務署から「未納ですよ」と言われて納めると、なんと税額の10%もの不納付加算税が課せられてしまいます。
(週刊税務通信No.2843税務研究会参照)
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修