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みなし譲渡

第093_2号 2002年1月

1.譲渡の意義

所得税での譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいいます。

この譲渡には、通常の資産の売買だけでなく、交換、競売、公売、収用、物納、代物弁済、財産分与等も含みます。

このように税法上の譲渡はかなり広い意味をもっています。

税法ではさらに本来譲渡とはいえない行為も譲渡とみなして、譲渡所得の対象とします。これを「みなし譲渡」といいます。

2.みなし譲渡

みなし譲渡とされる行為を譲渡先が法人と個人の場合に分けて整理すると次のようになります。

①譲渡先が法人の場合="譲渡先が法人の場合

法人に対する贈与、遺贈、低額譲渡(時価の2分の1未満の譲渡をいう。)

②譲渡先が個人の場合

個人に対する限定承認に係る相続、限定承認に係る包括遺贈

※ 限定承認
「被相続人の負債を被相続人の財産を限度として引き継ぐことを承認するもの。」
被相続人の負債が財産より多い場合に、相続人が被相続人の負債を背負い込まないようにするための制度。
被相続人の財産および負債をそのまま引き継ぐ場合は「単純承認」という。
※ 包括遺贈
遺贈とは遺言によって財産を他人にあたえる行為をいいます。
財産を特定して(たとえば土地とか預金)あたえる場合を「特定遺贈」といいます。
財産を特定しないで一定割合で(たとえば遺産の20%)あたえる場合を「包括遺贈」といいます。

3.時価課税

みなし譲渡に該当する場合はその移転した資産の時価で譲渡があったものとされます。

(例1)7年前に50万円で購入した絵画をP法人に贈与した。贈与時の絵画の時価は120万円であった。
法人に対する贈与ですから、みなし譲渡になります。贈与ですから対価はありません。そこで時価である120万円で譲渡したことになるのです。
120万円-50万円=70万円
これが贈与した者の総合長期譲渡所得の譲渡益となります。
(例2)被相続人Aの次のような財産、債務を相続人Bが限定承認により相続した。
100万円で取得した土地(時価1000万円)
借金1500万円
個人に対する限定承認による相続ですから、みなし譲渡になります。時価1000万円で土地が被相続人Aから相続人Bに譲渡されたとみなされます。
1000万円-100万円=900万円
これが被相続人Aの土地の譲渡益となり、これに対する税負担は被相続人Aが負うことになります。
相続人が被相続人の債務を弁済するために相続した土地を売却する際に、土地の相続時点までの値上がり益に対する税負担を相続人が負わないように保護しているのです。
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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