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証券税制

第084_1号 2001年4月

1.はじめに

株価低迷の折、なんとか株価を上げようと株式の売買にかかる税金の優遇策が連日新聞に出ています。

内容は個人が株式を売買した時にかかる税金の優遇策が中心となっていますので、以下個人所得税における課税制度と現在新聞紙上で出ている証券税制改正要望の内容について説明いたします。

2.源泉分離課税と申告分離課税

源泉分離課税
株式の売却額の1.05%を売買代金から天引して証券会社が天引額を納税します。この制度は2003年3月までで廃止の予定です。
申告分離課税
株式の売却益の26%を確定申告で納税します。

(設例)

60万円で買った株式を100万円で売却して40万円の売却益を得た。

(1) 源泉分離課税の税金
1,000,000円×1.05%=10,500円
(2) 申告分離課税の税金
400,000円×26%=104,000円

このケースですと、源泉分離課税の方がかなり有利となります。

<証券税制改正要望>

現在新聞に出ている改正要望には申告分離課税の税率を26%から20%に引き下げる案が出ています。

3.株式の売却損が出る場合

(設例)

60万円で買った株式を50万円で売却し、10万円の売却損が出た。

(1) 源泉分離課税
600,000円×1.05%=6,300円
(2) 申告分離課税
売却による利益が出ていませんので納税はありません。

この場合だと、申告分離課税が有利となります。
この売却損はその年に他の株式の売却益があれば、その売却益と売却損を相殺できる(損益通算といいます)のですが、大きな売却損だと売却益と相殺できずに損が残ってしまうことがあります。

現行税制では、その年に残った損は切り捨てられ翌年の売却益と相殺することはできません。そこで以下の要望があります。

<証券税制改正要望>

新聞では株式の売却損を翌年以降に繰り越して、翌年以降の売却益と相殺できるようにする「譲渡損失の繰越制度の創設」が上げられています。

4.その他の証券税制改正要望事項

(1) 200万円までの株式売却益を非課税
200万円まで株で儲けても、税金をかけないということです。
(2) 高齢者マル優の対象に株式を追加
高齢者マル優の対象に預貯金だけでなく、株式投信等を入れて、その配当を非課税にするということです。
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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