年末調整と確定申告
第079_2号 2000年11月
1. 年末調整とは?
サラリーマンなどの給与所得者は給与の支払の際にその金額に応じて源泉所得税が天引きされます。天引きされた源泉所得税は会社を通じて税務署に納付されますが、これはいわば給与にかかる所得税の仮払いです。
年末調整はその年最後に給与が支払われる際(通常12月)にその年における正規の所得税を計算して仮払いされた源泉所得税の合計額と過不足額を精算するものです。その年の源泉所得税の合計額がその年の正規の年税額より多ければその差額が還付され、少なければ不足額が追加徴収されます。
会社で年末調整を受けた場合、他に所得がなければ原則として本人が確定申告する必要はありません。
2. 年末調整の対象とならない人
次に掲げる人は年末調整をしないで、源泉徴収票を会社からもらって、自分で確定申告することになります。
- ①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出していない人。
- ②その年の給与の収入金額が2000万円を超える人。
- ③年の中途で退職し、再就職していない人。再就職して年末まで勤務している人は前職の源泉徴収票を再就職した会社に提示してそれを含めて年末調整の対象となります。なお、死亡退職の場合は退職時に年末調整をします。
- ④「災害減免法」により源泉所得税の徴収猶予又は還付を受けた人。
- ⑤非居住者(国内に住所を有していない、あるいは1年以上居所を有していない者)に該当する人。
3.年末調整を受けてさらに確定申告する人
大部分の給与所得者は年末調整を受けることによって納税手続きは完了しますが、次の人は年末調整を受けた後さらに自分で確定申告をする必要があります。
- ①給与所得と退職所得以外の所得(たとえば地代家賃等、原稿料、年金、満期保険金などの収入にかかる所得)の合計額がその年において20万円を超える人。給与所得と退職所得以外の所得が20万円以下の場合は申告する必要がないので、その所得は事実上非課税となります。
- ②同族会社の役員等がその会社から受ける貸付金の利子、不動産の賃貸料などは同族会社ということでその恣意性を考慮して20万円以下でも確定申告する必要があります。
- ③雑損控除、医療費控除、寄付金控除の所得控除は年末調整では受けられないので、確定申告して受けることになります。なお、年末調整で受けられる所得控除を受けそこなった場合には確定申告することで受けることができます。
- ④住宅ローン控除については初年度は必ず確定申告することになっています。その際2年目以降年末調整で控除を受けることを希望する場合は確定申告書に控除証明書の交付を要することを記載します。
- ⑤退職金については通常の場合、会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出することにより適正な所得税、住民税が天引きされるので確定申告する必要はありません。「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと支払額の20%が源泉徴収されるので確定申告してその源泉徴収税額を精算する必要があります。
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修