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成年後見制度

第075_2号 2000年7月

はじめに

従来の民法における禁治産者・準禁治産者制度に代えて、民法改正その他新しい法律の制定により、成年後見制度が2000年4月より施行されています。

主な改正点は次のとおりです。

1.後見

     
  1. 従来の禁治産の制度がほぼ維持されています。差別的な印象のある「禁治産」という用語を「後見」と変更しています。「禁治産者」は「成年被後見人」とされます。
  2. 従来の禁治産者の行為は後見人の同意があろうとなかろうとすべて取り消すことができました。新法では日用品の購入その他日常生活に関する行為については、本人が単独で行っても完全に有効とされ、取り消すことができなくなりました。
  3. 従来の禁治産者の後見人は配偶者がいれば必ずその配偶者が後見人となり、後見人の人数も1人と限られていました。新法ではこの配偶者後見制度と後見人の人数制限が廃止されました。本人が高齢であれば通常配偶者も高齢であり、後見する能力に乏しい場合があり、また後見人が複数必要な場合を配慮したためです。
  4. 法人を後見人とすることができるようになりました。

2.保佐

     
  1. 従来の準禁治産の制度がほぼ維持されています。差別的な印象のある「準禁治産」という用語を「保佐」と変更しています。「準禁治産者」は「被保佐人」とされます。
  2. 従来の準禁治産者の対象であった浪費者が除外されました。
  3. 従来は保佐人は同意権だけを有し、取消権は持っていませんでしたが、新法では保佐人が同意権を有する行為は取消権も有することになりました。
  4. 本人の利益を害しないにもかかわらず保佐人が同意しない場合に備えて、保佐人の同意に代わる家庭裁判所の許可の制度が新設されました。
  5. 保佐人に代理権を付与できるようになりました。

3. 補助

  1. 保佐よりも判断能力の高い人を対象とした新しい制度です。
  2. 本人の同意により特定の法律行為についての補助人の同意権・取消権または代理権の付与を行います。つまり本人の意思に基づいて援助の内容を選択できることが特徴です。
  3. 補助人の同意に代わる裁判所の許可の制度が設けられています。

4. 任意後見制度

任意後見契約法の制定により、本人が健常なうちに契約により選任した任意後見人に判断能力低下後の財産管理等の事務について代理権を付与しその処理の委託ができるようになりました。

5. 成年後見登記制度

従来の禁治産者・準禁治産者の制度は、戸籍への記載など差別的な印象があることで利用がしにくいものでした。戸籍記載は廃止され、後見登記法の制定により新しい公示制度ができました。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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