最近、新聞紙上においても「キャッシフロ-」といった文字が目立つようになりました。「キャッシュフロー」とはその名のとおり「お金の流れ」です。
このお金の流れを意味するキャッシュフローが従来からの企業業績指標である「利益」に対抗して今日重要視されています。
利益を追求する企業はよく「儲けてなんぼの世界」だと言われます。
この儲けを現す指標=「利益」です。
企業がいかに利益を出すかによりその会社の善し悪しは判断されています。「企業とは利益追求団体である」と言われています。このことは常識と言えます。
この常識が、昨今の不況下での黒字倒産、つまり、「利益は出ているのに金の無い状況下での倒産」の増加により変わりつつあり、その代わりに登場したのが、「利益より金だよ」という、「キャッシュフロ-」です。
前回に説明した税効果会計においても、その制度を採用するかしないかにより決算上の利益は大きく違ってしまい、「真実の利益はいったいどれなの」といったことも「信じるものはお金だけ」というキャッシュフローが注目される一つの理由です。
景気の良い時には、メインバンクが湯水のように資金を企業に貸し付けて、企業はそのお陰で特にお金の動きを利益ほど重要視していなかったといえます。
しかし、金融不安がささやかれ、銀行の自己資本比率の低下などによる貸し渋りにより湯水のように融資が受けられなくなった現状では、浮いたお金の範囲内で投資をするといった、キャッシュフロ-の考え方がよく言われるようになりました。
キャッシュフロ-という言葉は、新しい言葉ではなく、経営分析の用語としては昔からある用語です。教科書的には、「内部創出資金」つまり、会社が儲けて手元に残ったお金のことを意味します。計算式は次のとおりです。
つまり、税金差引後の利益からお金の支払のない経費である減価償却費を加算して、その利益から外部に支出する配当と役員賞与を差し引いたものが,1事業年度の儲けのうち手元に残るお金ということです。
最近新聞紙上で「キャッシュフローの範囲内で設備投資をする」といった記事は、儲けて手元に残ったお金の範囲内で次期へ投資をするという意味です。
もう銀行借入して投資をするのでなく、慎重に身の丈ほどの経営をしようということでしょうか。
企業のお金が滞留してしまう在庫や売掛金・手形などを少なくして活用できるお金を多くしようというのもキャッシュフローの考え方です。
また、指標となる尺度を利益でなく,お金の入出金に求めて企業を運営していこうとするキャッシュフロー経営もキャッシュフローの考え方です。
「信じられるのはお金だけ」とは何か寂しいものがありますが,これも時代の流れ、乗り遅れないようにしたいものです。
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