会計理論の基礎で、売上などの「収益」と「仕入」などの費用とを対応させるという費用収益対応の原則というものがあります。これは、分かりやすい例では、ゲーム屋さんでファミコン1台売れたら、その売上金額とファミコンの仕入金額をその事業年度で一緒に計上しろということです。当たり前のことです。
しかし、この原則は全ての費用を対応する売上と同じ事業年度で計上しろと要求しているのです。仕入は簡単に売上に対応させられますが、では、自動車を買った場合どのように収益と対応させるのでしょうか?
自動車は営業の人が使って注文を取ったり、商品を納品したりして売上に貢献しています。ということは、自動車が使える限り収益である売上に貢献していることになります。
そこで、自動車の使用可能期間(耐用年数)の各事業年度の売上に自動車の取得価額を費用としてばらまいて対応させようとするのが減価償却なのです。
耐用年数5年の自動車(百万円)で毎年30万円の売上を上げている会社があるとします。
1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | |
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売上高 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 |
自動車費 | 100 | 0 | 0 | 0 | 0 |
差引利益 | △ 70 | 30 | 30 | 30 | 30 |
このように、初年度大赤字であとは黒字とめちゃめちゃな利益となります。
1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | |
---|---|---|---|---|---|
売上高 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 |
減価償却費 | 20 | 20 | 20 | 20 | 20 |
差引利益 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 |
取得原価百万円の5分の1づつ減価償却費として売上に対応させることにより、ちゃんとした利益が計算できるのです。このように固定資産を買ったときに一度に費用とするのではなく、それを使って売上に貢献できる期間に取得原価を割り振って計上するのが減価償却です。
先ほどの例のように取得原価を単純に使用可能期間(耐用年数)で割った均等額です。
100万円÷5年=1年につき20万円
取得原価に一定率を掛けて1年目の減価償却費を出し、2年目は取得原価から1年目の減価償却費を引いた残りに一定率を掛けて減価償却費を出し、3年目以降も取得原価から今までの減価償却費の累計を引いた残りに一定率を掛けて計算します。
1年 | 1,000,000 | ×0.369 | =369,000 | ||||
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2年 | (1,000,000 | -369,000) | ×0.369 | =232,839 | |||
3年 | (1,000,000 | -369,000 | -232,839 | ×0.369 | =146,921 | ||
4年 | (1,000,000 | -369,000 | -232,839 | -146,921) | ×0.369 | = 92,707 | |
5年 | (1,000,000 | -369,000 | -232,839 | -146,921 | -92,707) | ×0.369 | = 58,498 |
これが定率法で、1年目2年目は定額法より多く減価償却費を計上できますので、節税効果から定率法が多く採用されています。この節税効果が大きいため、新規取得の建物について平成10年の税制改正で定率の採用はできず、定額法のみによることとなりました。
しかし、既存の建物についてはそのまま定率法の採用を継続できます。また、建物の耐用年数が最高50年となりましたが、既存建物にも適用されるので注意が必要です。
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