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暗号資産(仮想通貨)

第369号 2025年2月

1.はじめに

平成 29 年 4 月に施行された「資金決済に関する法律(資金決済法)」の改定により、仮想通貨の法的な定義が明確化され、その後、資金決済法の改正(令和 2 年 5 月施行)により、法令上、「仮想通貨」は「暗号資産」へと呼称変更されました。


代表的な暗号資産であるビットコイン(BTC)は、この記事を書いている現在、1BTC あたり約1,450 万円にもなっています。個人と法人で暗号資産の税金の取扱いは異なりますが、今回は法人が所有する暗号資産についてご紹介します。

2.暗号資産とは?

暗号資産とは、インターネット上でやりとりできる財産的価値であり、資金決済法において次の性質をもつものと定義されています。
(1) 不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる。
(2) 電子的に記録され、移転できる。
(3) 法定通貨又は法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない。

3.売却した場合

法人が保有する暗号資産を売却(日本円に換金)した場合の利益は、その暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価等との差額となります。
例えば、2,000 万円で 2BTC を購入し、その後、0.2BTC を 250 万円で売却した場合、利益は次の計算式のとおりです。
250 万-((2,000 万÷2BTC)×0.2BTC)=50 万
なお、国内の暗号資産交換業者を通じた暗号資産の売却には消費税は課されません。法定通貨等の支払手段と同じ分類とされ、非課税となります。

4.期末時価評価

法人が期末に有する市場暗号資産(活発な市場が存在する暗号資産)については、一部を除き、原則として時価により評価することとされています。この理由として、「活発な市場が存在する暗号資産は、主に時価の変動により売却利益を得ることや決済手段として利用すること」といった点が挙げられます。
なお、評価額と帳簿価額との差額は評価益(含み益)又は評価損(含み損)として計上し、翌事業年度で洗替処理をすることになります。

5.令和 6 年度税制改正

暗号資産の普及とともに、その保有期間が長期間となる場合も生じてきており、譲渡についての制限その他の条件が付されていることについて公表のための手続きがとられている暗号資産(特定譲渡制限付暗号資産)は、その保有目的が必ずしも「時価の変動により売却利益を得ることや決済手段として利用すること」には該当しないと考えられることから、期末に原価法により評価することができることとされました。
この改正は、令和 6 年 4 月 1 日以後に終了する事業年度について適用されます。

6.おわりに

個人が保有する暗号資産についても税金の取扱いが議論されています。現状、売却により生じた利益は原則として雑所得に該当し、総合課税(累進税率)の対象となっていますが、他の金融商品と合わせ、譲渡所得(分離課税)として取り扱うかどうかの見直しが検討されています。

アトラス総合事務所 税理士 黒川 洋介
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