例年、12 月号ではこの時期に公表される税制改正大綱をテーマに書いていますが、例年より遅れており、大綱が公表されていない状況です(12 月
19 日現在)。
国民民主党は所得税がかからない「103 万円の壁」の金額について 178 万円への引き上げを求めていますが、与党は 8 兆円近い税収減が見込まれるなどとし、物価上昇率に基づき、2 割上げた 123万円とする方向で協議が難航しています。
そこで、今回は議論の俎上になっている「年収(103 万円)の壁」について確認します。
年収の壁とは、パートの主婦(主夫)ら配偶者の社会保険や所得税の扶養に入りながら働く人が一定の年収を超えると手取り額に影響が出る問題や金額を指します。
主な壁には、所得税が発生する 103 万円の壁、勤務先の企業規模が一定条件を満たすと、自らが健康保険や厚生年金保険に加入するため、(配偶者の扶養から外れ自らの)社会保険料が発生する106 万円の壁、企業規模にかかわらず配偶者の扶養から外れ、社会保険料が発生する 130 万円の壁、所得税の配偶者特別控除が減り始める 150 万円の壁があります。
このうち、今回は所得税に関する年収の壁についてご紹介します。
給与収入がある人は、最低 55 万円の給与所得控除と 48 万円の基礎控除があるため、これらの控除額の合計である 103 万円以下であれば、所得は 0 円となり本人に所得税はかかりません。
家族を扶養している場合で、配偶者の給与収入が 103 万円以下であれば、38 万円の配偶者控除が受けられます。16 歳以上の子など扶養親族についても同様、子の給与収入が 103 万円以下であれば、38 万円の扶養控除が受けられます。
さらに、19 歳以上 23 歳未満の子(大学生年代)については教育費にお金がかかるという観点から、同様に子の給与収入が 103 万円以下であれば、扶養控除は 63 万円に増額されています。
昨年の令和 6 年度税制改正大綱で明記されていた内容ですが、令和 6 年 10 月分から児童手当の対象が高校生年代まで拡大したことに伴い、15歳以下とのバランスを踏まえ、次のとおり、扶養控除が縮小される予定です。
所得税 25 万円(現行:38 万円)
住民税 12 万円(現行:33 万円)
なお、この扶養控除の見直しは、令和 8 年分以降の所得税と令和 9 年度分以降の住民税から適用することを前提に、令和 7 年度税制改正で決定する見込みでしたが、先送りされるかもしれません。
給与収入が 103 万円を超えると配偶者控除が受けられませんが、配偶者の給与収入が 103 万円超~201 万円以下の場合に控除が受けられる配偶者特別控除という制度があります。
給与収入が 150 万円以下であれば、配偶者控除と同じ金額の所得控除が受けられます。150 万円を超えても 201 万円までは段階的に控除額が減少していく仕組みです。
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