令和5 年11 月に国税庁が公表した最新の調査事績によると、法人の追徴税額は3,563 億円と前年度比で1,028 億円も増えています。また、国税当局は過去の申告漏れの事例を人口知能(AI)に学習させるなど、AI の活用を本格化させています。
税務調査は申告内容が正しいかどうかを帳簿などで確認し、申告内容に誤りが認められた場合や、申告する義務がありながら申告していなかったことが判明した場合に是正を求めるものです。
今回は、国税局や税務署の職員が納税者の事務所等に赴き、申告内容の確認などを目的として国税通則法に基づく質問検査権を行使して行う任意調査を前提とします。
なお、質問検査に正当な理由なく応じない場合には罰則規定があるため、任意調査であっても税務調査に応じる義務(受忍義務)があります。
手続きの流れは次のとおりです。
原則として、納税者及び税務代理人の双方に対し、電話等により調査の開始日時・開始場所・調査対象税目・調査対象期間などを事前通知します。
ただし、事前通知を行うことにより正確な事実の把握を困難にする、又は調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると判断した場合には、事前通知せずに税務調査を行うことがあります。
調査担当者からの質問に対して正確に回答するとともに、調査担当者からの求めに応じ、帳簿書類などを提示する必要があります。
申告内容に誤りがない場合は、更正処分等をすべきと認められない旨を書面により通知します。一方で、申告内容に誤りがある場合は、調査結果の内容を説明し、修正申告を勧奨します。
修正申告の勧奨に応じるかどうかは、あくまでも納税者の任意であり、応じない場合には更正処分等を行うこととなります。なお、修正申告を行った場合には、更正の請求をすることはできますが不服申立てをすることができません。
税務署長等が行った処分に不服があるときは、処分の通知を受けた日の翌日から3 か月以内に、税務署長等に対する再調査の請求又は国税不服審判所長に対する審査請求をすることができます。
処分に不服がある納税者は、その処分の取消しを求める訴訟を提起するためには、原則として審査請求を行い、その裁決を経た後でなければならないとされています。
通常の手続きの流れとは別に、税理士法に基づく書面添付制度というものがあります。決算申告の内容について、どのような判断や処理をしているかといった点を記載した書類を申告書に添付します。この制度を利用すると、実地調査の前に意見聴取といって、税理士が調査官からの質疑に回答し、その結果、約90%くらいは実地調査が省略されています。
当該制度をご検討される場合には、税務担当へお問い合わせください。
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