その年の世相を表す「今年の漢字」は「税」。過去にも、消費税が5%から8%に引き上げられた平成26 年に「税」が選ばれています。
政治の世界では、「裏金」問題など騒がれている最中、物価上昇を上回る賃金上昇の実現を最優先の課題とし、減税を前面に打ち出した税制改正大綱が12 月14 日に発表となりました。
物価高を受けた家計支援策の一環として、令和6 年6 月に1 人当たり所得税3 万円、住民税1 万円が減税となります。納税者本人に加え、配偶者や扶養家族も対象となります。
所得税については、令和6 年6 月以降の給与又は賞与から天引きされる源泉徴収税額から減税し、減税しきれなかった場合は翌月以降の税額から順次控除します。
なお、国会議員を含め、富裕層は対象外とすべきという声もあり、年収2,000 万円超は減税の対象外となります。
この減税は一時的な措置ということですが、大綱には「今後、賃金、物価等の状況を勘案し、必要があると認めるときは、所要の家計支援の措置を検討する」と明記され、含みを持たせた表現となっています。
令和6 年10 月分から児童手当の対象が高校生年代まで拡大することに伴い、15 歳以下とのバランスを踏まえ、次のとおり、扶養控除が縮小されます。
ただし、高校生年代は子育て世帯において教育費等の支出がかさむ時期であるため、扶養控除が縮小しても、全世帯で児童手当との差額はプラスになるよう設計されています。
なお、この扶養控除の見直しは、令和8 年分以降の所得税と令和9 年度分以降の住民税から適用することを前提に、令和7 年度税制改正において決定する見込みとなります。
ストックオプション(株式購入権)を行使した際に税制優遇を受けられる権利行使価格の限度額が次のように引き上げられます。
税制適格ストックオプションとは、権利行使した時点では課税されず、取得した株式を売却した時まで課税(給与課税)を繰り延べることができ、売却益に対して約20%の税金がかかります。
スタートアップにとっては、高額な給与を支払う資金が不足していることもあり、ストックオプションを活用して人材を確保しやすい環境を税制面から整えることを目的とした改正です。
現行基準(資本金1 億円超)は維持しつつ、当分の間、前事業年度に外形標準課税の対象であった法人が資本金1 億円以下になった場合でも、資本金と資本剰余金の合計額が10 億円を超える場合には外形標準課税の対象となります。
この改正は、令和7 年4 月1 日以後に開始する事業年度から適用されます。
資本金と資本剰余金の合計額が50 億円を超える法人の100%子法人等のうち、資本金が1 億円以下であって、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超えるものも外形標準課税の対象に加わります。
この改正は、令和8 年4 月1 日以後に開始する事業年度から適用されます。
大企業と中小企業で制度の内容が異なるため、今回は中小企業を前提に確認します。
賃上げ税制とは、前年度より給与を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税から税額控除できる仕組みです。控除の条件は今回の改正を踏まえると次のとおりです。
さらに、中小企業向けに5 年間の繰越控除措置が新設されました。企業の約4 割が赤字であり、そもそも賃上げしても税額控除の恩恵が受けられません。そこで、繰越税額控除をする事業年度において給与総額が前年度を超える場合に限られますが、黒字になった事業年度まで繰越しを認めることとされました。
この改正は、令和6 年4 月1 日以後に開始する事業年度から適用されます。
ここ最近の物価上昇を踏まえ、損金不算入となる交際費等の範囲から除外される飲食費の金額基準が1 人当たり1 万円以下(現行:5,000 円以下)に引き上げられるとともに、適用期限が3 年延長されました。
大企業は今回の改正による影響が大きいかと思いますが、中小企業は年間で800 万円まで損金算入が認められているため、あまり大きな影響はないかもしれません。
この改正は、令和6 年4 月1 日以後に支出する飲食費について適用されます。
法人税率については、これまで約40 年間にわたって段階的に引き下げられ、現在の法人税率は23.2%となっています(中小企業は15%の軽減税率あり)。今回の改正で様々な減税措置が設けられましたが、減税措置の実効性を高める観点からも、今後、法人税率の引上げも視野に入れた検討を行うとのことです。
また、防衛費増額に向けた増税については、令和5 年度税制改正大綱で「令和6 年以降の適切な時期」としていましたが、結果的に今回も見送りとなりました。
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