2023 年度税制改正により、暦年課税及び相続時精算課税(以下、「精算課税」)について見直しが行われました。
生前贈与の相続財産への加算期間を3 年から7年に延長し、精算課税においては110 万円の基礎控除の創設などが盛り込まれています。
この改正は、2024 年1 月1 日以後に受けた贈与について適用されます。
贈与税の課税方法については、暦年課税と精算課税の2 つがあり、一定の要件に該当する場合に精算課税を選択することができます。
2022 年分の贈与税の申告件数は49 万7 千人で、うち、暦年課税は45 万4 千人、精算課税は4 万3千人です(出所:国税庁)。精算課税は2003 年に導入された制度ですが、全体の贈与のうち10%にも満たない利用件数となっています。
では、暦年課税と精算課税では、どのような違いがあるのでしょうか?
1 月から 12 月までの 1 年間にもらった財産合計が基礎控除額(110 万)を超えた場合に超えた部分に累進税率(10%~55%)により贈与税がかかります。つまり、110 万以下なら贈与税はかかりません(申告不要)。
60 歳以上の贈与者から贈与者の推定相続人又は18 歳以上の孫への贈与について認められます。贈与したときは 累積2,500 万円まで非課税であり、超えた部分は 一律20%の税額となります。
ただし、贈与者の相続発生時には、その贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算(精算)して相続税を計算することになります。
一度、精算課税を選択すると撤回して暦年課税に戻ることができないため、留意が必要です。
相続開始前贈与の相続財産への加算期間が3 年から7 年に延長され、この改正は2024 年1 月1日以後に受けた贈与について適用されます。
具体的には以下のとおりです。
暦年課税の基礎控除とは別に、精算課税についても110 万円の基礎控除が創設されました。
この基礎控除は暦年課税とは異なり、相続財産への加算はありません。110 万円までであれば、相続までの期間を心配せずに贈与が可能なのです。
暦年課税と精算課税のどちらが有利かということは、贈与の時期、財産の種類、贈与財産の価額等によって異なるため、一概には言えません。
ただし、暦年課税の税負担が高まる一方、精算課税の税負担が下がることになったため、両者の選択の幅が広がったのではないでしょうか。
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