インボイス制度の改正案
第344号 2023年1月
1.はじめに
今年の 10 月から始まるインボイス制度ですが、12月末時点での登録件数は200万件となりました。
法人の登録率は 75%ですが、個人は 34%にとどまっています。
この点、円滑な制度移行のため、税負担や事務負担を軽減する措置が 2023 年度税制改正で講じられました。
2.納税額が売上税額の 2 割に軽減?
- ① 対象者
- インボイス発行事業者の登録をしなければ、課税事業者にならなかった者
(2 年前の課税売上が 1,000 万円以下)
- ② 対象期間
- 2023 年 10 月 1 日~2026 年 9 月 30 日を含む課税期間
- ③ 内容
- 納税額を売上にかかる消費税額の 2 割とすることができます。
売上税額 - 売上税額 × 80% = 納税額
これは、みなし仕入率が 80%である場合の簡易課税制度と同じ計算方法ですが、簡易課税とは異なり、「事前の届出」は不要です。
3.少額取引はインボイス不要?
- ① 対象者
- 2 年前の課税売上が 1 億円以下または 1 年前の上半期の課税売上が 5,000 万円以下の者
(全事業者の 90%が対象となるようです。)
- ② 対象期間
- 2023 年 10 月 1 日~2029 年 9 月 30 日
(この期間に行う課税仕入れが対象。)
- ③ 内容
- 税込 1 万円未満の課税仕入れ(経費等)については、インボイスの保存がなくとも帳簿のみで仕入税額控除が可能となります。
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4.少額な値引き・返品は対応不要?
- ① 対象者
- すべての事業者
- ② 対象期間
- 適用期限のない恒久的な措置
- ③ 内容
- 税込 1 万円未満の値引きについては、返還インボイスの交付が不要となります。
決済時に買手側の都合で差し引かれた振込手数料を売手が「売上値引き」として処理する場合の事務負担が懸念されていましたが、この点が解消されました。
5.登録申請は 4 月以降でも大丈夫?
- ① 対象者
- すべての事業者
- ② 内容
- 原則の申請期限は今年の 3 月末まででしたが、申請書に提出が「困難な事情」を記載する必要もなく、9 月末まで半年延長されました。
6.おわりに
12 月に公表された税制改正大綱は、税制改正法案のたたき台であるため、今後、改正法案を作成し、国会で審議され、3 月頃には法案が成立するという流れです。
よって、詳細については、法律が成立しないと確定しないため、今後の動向に注目しましょう。
アトラス総合事務所 税理士 黒川 洋介