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予納制度

第339号 2022年8月

1. はじめに

今回は、税金をあらかじめ納付(予納)することができる制度についてご紹介します。

予納制度については昔からありますが、2019 年より、対象となる国税についておおむね 12 か月以内に確定するものまで拡充し、併せて、ダイレクト納付により行うことができるようになりました。

また、2022 年 5 月より、ダイレクト納付を利用した国税の分割納付機能を利用できるようになりました。

2. 納税義務の成立と確定

国税のうち、例えば法人税を例にすると、決算日時点で納税義務が成立し、決算日から 2 か月以内に申告することで税額が確定し、納付します。 よって、確定前にされた納付は「誤納」となります。

ただし、納税者の便宜などを考慮し、「国税の予納申出書」を提出するなどの要件を満たす場合は、誤納とは区別して、予納として取り扱うこととされています。

では、納税者の便宜とは何でしょうか?以下、制度の内容とメリットについてご説明します。

3. 予納制度とは

予納とは、税務調査等により、近日中(おおむね 6 か月以内)に納付すべき税額の確定が見込まれる場合に、修正申告書等を提出する前であっても、見込金額を税務署長に申し出て、あらかじめ納付することができる制度です。

期限内申告においては、おおむね 12 か月以内に納付すべき税額が確定することが確実な国税についても予納することができます。

4. 予納のメリット

予納をすると、延滞税の計算は納付された日までとなるため、延滞税の額が少なくなる場合があります。

具体的には、税務調査の指摘により、修正申告をする場合、指摘事項に対する税務署とのやり取りで日数を要することがあります。予納をすることで、この間、延滞税といった利息が雪だるま式に増えるのを防ぐことができます。

5. 予納ダイレクト

ダイレクト納付を利用している場合には「国税の予納申出書」に代えて、e-Tax にて予納の申出が可能です。予納日、予納金額を登録することで、登録した日に予納金額が引き落とされます。

対象税目は、法人税及び地方法人税、消費税及び地方消費税、申告所得税及び復興特別所得税、贈与税です。

6. ダイレクト分割納付

予納とは異なり、すでに納期限が過ぎている場合で、滞納となった国税をやむを得ず分割で納付するときに、分割納付計画を登録することができるようになりました。

利用にあたっては、所轄税務署と事前に相談の上、納付計画を登録する必要がありますのでご注意ください。

7. おわりに

納期限まで払わなくてもよい税金をなぜ前もって払うのか?という意見もありますが、資金繰りの観点から、「予納制度」を 1 つの選択肢として検討してもいいのかもしれません。

アトラス総合事務所 税理士 黒川 洋介
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