10 月に発足した岸田内閣が「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトに、税制改正大綱が12 月10 日に発表となりました。
適用期限を令和7 年12 月31 日まで4 年延長するとともに、以下の改正が行われます。
上記①の控除率の引き下げについては、住宅購入者の減税額が、支払う利息より大きくなる「逆ざや」の存在が指摘されており、減税によって利益を得られる上、不必要な借り入れを招くことが問題視されていたことによる対応です。
直系尊属(父母・祖父母等)から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、適用期限が令和5 年12 月31 日まで2 年延長されます。
また、民法改正に伴い、成年が18 歳以上とされることにより、受贈者の年齢要件が18 歳以上(現行:20 歳以上)に引き下げられます。
今回の改正による目玉となりますが、大企業と中小企業で制度の内容が変わるため、今回は中小企業を前提に確認します。
まず、賃上げ税制とは、前年度より給与を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税から税額控除できる仕組みです。
現状は、雇用者全体の給与総額を1.5%以上増やした場合の税額控除率は15%とし、2.5%以上増やし、かつ、教育訓練費を10%以上増やした場合の税額控除率は10%加算した25%(上乗せ措置)となっています。
今回の改正では、企業の賃上げを促すため、制度を大幅に拡充し、最大の税額控除率は異例の40%となります。控除の条件としては以下のような3 段階となっており、最大限の控除を受けるには相当なハードルがあります。
現在、利益を上げて法人税を払っている中小企業は4 割に満たないことを考えると、税額控除であるこの制度の効果は限定的かもしれません。
昨年の令和3 年度税制改正により、電子帳簿保存法が改正され、そのうち、「電子取引データの保存」は強制適用とされました。そのため、令和4 年1 月1 日以降、電子データで受け取った請求書や領収書はデータでの保存が義務付けられ、書面による保存ができなくなる予定でした。
今回の改正で、令和4 年から令和5 年12 月31日までの2 年間を猶予期間として、電子保存ができない場合でも、やむを得ない事情として紙での保存が容認されることになります(税務署への手続き不要)。
昨年の改正から準備期間が1 年しかなく、本制度への対応が困難な事業者の実情に配意した改正となります。
固定資産税の評価額は3 年に一度見直しがされます。昨年の令和3 年度は評価替えの年でしたが、コロナの影響を考慮し、令和3 年度に限った特例として、増税となる土地については税額を据え置くこととされていました。
今回、この特例について、住宅地向けは予定どおり終了となりましたが、商業地に関しては税額の据え置きはやめ、地価上昇に伴う税額の上昇幅(5%)を通常の半分(2.5%)に抑えることとなりました。
所得税の確定申告書を提出しなければならない者で、以下の①②の要件のいずれにも該当する者は、財産債務調書をその年の翌年3 月15 日までに提出しなければなりません。
上記、現行の提出義務者に加え、総資産10 億円以上の資産家は、所得にかかわらず、調書の提出が義務付けられます。また、提出期限はその年の翌年6 月30 日となります。
なお、この改正は令和5 年分以後の財産債務調書について適用されます。
給与所得などにかかる所得税は、所得が多いほど税率が上がる累進課税となっていますが、株の売却益や配当など金融所得への課税は一律20%となっています。このため、所得が1 億円のラインを境に、金融所得の多い富裕層の所得税負担率が下がっていく「1 億円の壁」という問題が従来から指摘されていました。
この点を解消するため、当初は金融所得課税の強化が予定されていましたが、今回の改正はなく、「これを是正し、税負担の公平性を確保する観点から、金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある。」といった先送りの結論となりました。
昨年の令和3 年度税制改正大綱において検討事項とされ、今回の改正で何かしらの手当がされるのでは、という報道等もありましたが、結果的に、昨年とほぼ同じ内容が大綱に記載されるに留まりました。
「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、本格的な検討を進める(一部抜粋)。」
30 万円未満の少額減価償却資産の特例は、対象資産から貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供した資産が除外されます。
上記の改正は、10 万円未満の資産や20 万円未満の資産についても同様です。
足場レンタルなどの節税スキームを封じ込める改正と考えられます。
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