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教育資金の一括贈与

第326号 2021年7月

1.はじめに

平成 25 年 4 月に始まった制度で、祖父母などから、子や孫などの教育資金として 1 人当たり1,500 万円まで一括して贈与した場合、非課税扱いとなるものです。

この制度の適用期限は令和 3 年 3 月末でしたが、同年の税制改正により、節税規制が実施されるとともに、適用期限が令和 5 年 3 月末まで 2 年延長されました。

2.制度の趣旨

祖父母や両親の資産を早期に移転させることにより、若年世代の教育にかかるコストの負担軽減を図りつつ、経済を活性化させるという観点から、この制度が創設されました。

3.主な手続き

まずは、贈与者となる祖父母と、受贈者となる子や孫との間で贈与契約を結び、金融機関等で受贈者名義の口座を開設し、1,500 万円を限度として、資金を預け入れます。

そして、教育資金非課税申告書をその口座開設を行った金融機関等を経由して、税務署へ提出します。

その後、教育資金の支払をする都度、その口座から払出し、学校等に支払い、領収書等を金融機関等へ提出します(金融機関等により異なります。)。

4.受贈者の要件

30 歳未満の子や孫であり、贈与を受けた年の前年の合計所得金額が 1,000 万円以下であることが要件です。

5.教育資金とは?

以下の①②に分類され、それぞれに記載されたものが教育資金に該当します。

  1. 学校等に対して直接支払われる金銭
    ・入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費など
  2. 学校等以外の者に対して直接支払われる金銭で、教育を受けるために支払われるものとして、社会通念上相当と認められるもの
    ・学習塾や習い事(水泳教室など)に関する対価や施設の使用料など

    ※学校等以外の者に支払われるものについては、500 万円が限度となります。

6.令和 3 年度税制改正の変更点

贈与者が死亡した場合、贈与者の死亡前 3 年以内の贈与に係る残額は、原則として贈与者の相続財産とされますが、死亡前 3 年以内の贈与でなければ、残額は相続財産には含まれませんでした。

今回、以下の 2 点が改正されました。

  1. 贈与者が死亡した時点での教育資金残高は、贈与から死亡までの年数にかかわらず、受贈者が 23 歳未満の場合等を除いて、贈与者の相続財産に加算されます。
  2. 受贈者が贈与者の孫等である場合、贈与者死亡時の教育資金残高に係る相続税額に、いわゆる 2 割加算が適用されます。
  3. 2割加算とは?
    相続等によって財産を取得した人が、被相続人の配偶者・子・両親以外(兄弟姉妹や孫養子)の場合、各人の相続税額の 2 割が加算される仕組み。
アトラス総合事務所 税務部門 黒川 洋介
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