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空き家問題

第327号 2021年8月

1.はじめに

総務省が 5 年ごとに発表する「住宅・土地統計調査(平成 30 年)」によると、空き家は全国で 849万戸にのぼり、総住宅数に占める割合(空き家率)は 13.6%と、過去最高を記録しました。

この 20 年間で 1.5 倍(576 万戸→849 万戸)に増加しています。

管理が不十分になった空き家については、火災の発生や建物の倒壊など多岐にわたる問題が生じます。昨今、空き家に対する対策の重要性が高まっていますが、今回は、そのうち、空き家に関する税制について、ご紹介します。

2.空き家放置で固定資産税が 6 倍に?

土地・建物などの固定資産を所有していると、次の計算方法により、固定資産税がかかります。

※都市計画税については省略します。

(税額の計算方法)
固定資産税評価額×1.4%=固定資産税]

住宅用地については、税負担を軽減する目的から、200 ㎡までの部分(小規模住宅用地)については、固定資産税評価額を 6 分の 1 にした上で、1.4%をかけるため、固定資産税が大幅に軽減されています。

ただし、「特定空き家等」に該当すると、上記の軽減措置の適用を受けることができません。

「特定空き家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態など、一定の状態にある空き家を指します(空家等対策の推進に関する特別措置法 2 条 2 項)。

3.空き家を売却したら?

土地・建物などの固定資産を売却し、売却益(譲渡所得)が生じた場合には所得税や住民税がかかります。これは空き家であっても同様です。

(譲渡所得の計算方法)
収入金額-必要経費※-特別控除=譲渡所得 ※取得費+譲渡費用

なお、土地や建物の譲渡所得については、給与所得などの所得とは区別し(分離課税)、所有期間に応じてそれぞれ次の方法により計算します。

※復興特別所得税については省略します。

(長期譲渡所得の税額)※所有期間 5 年超
譲渡所得×15%(住民税 5%)
(短期譲渡所得の税額)※所有期間 5 年以下
譲渡所得×30%(住民税 9%)

4.特別控除の適用

上記 3.「譲渡所得の計算方法」の算式中、「特別控除」というものを控除しています。

これには例えば、居住用財産(自己の居住用)を売却した場合の 3,000 万円控除が該当します。また、平成 28 年度税制改正により、相続により取得した空き家等を売却した場合も、一定の要件に該当すれば、3,000 万円控除の適用があります。

5.おわりに

今年の 4 月に所有者不明土地の解消に向けた関連法案が成立し、令和 6 年を目途に相続登記が義務付けられることになりました。

相続登記など、登記に関するご相談はアトラス総合事務所の法務部門へ、税金に関するご相談は税務部門へご相談ください。

アトラス総合事務所 税務部門 黒川 洋介
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