ドコモ口座の問題が明るみになったのは先月 9月。第三者が銀行口座番号やキャッシュカードの暗証番号等を不正に入手し、ドコモ口座に銀行口座を新規に登録することで発生していたとのことです。被害にあった預金者の通帳には、身に覚えのない「ドコモコウザ」「デイーバライ」などへの出金が記録されていたといいます。
10 月 14 日時点の被害件数は 127 件、被害総額は 2,850 万円とも言われています。
ドコモ口座は、ネットやアプリ上で送金やお買い物ができるバーチャルなお財布で、誰でも無料で簡単に開設できます。
まずは、d アカウントを作成し、ドコモ口座を新規登録の上、ドコモ口座に銀行口座を登録(本人確認)することで開設可能となっており、メールアドレスのみで簡単に登録できるというメリットがある一方、本人確認が不十分だったのでは?という問題も指摘されています。
今回のような被害にあった場合、個人の所得税の計算上、何か救済措置はあるのでしょうか?
実は、担税力を考慮するためという趣旨に基づき、所得から一定額をマイナスしてくれる「雑損控除」という制度があります。
では、この「雑損控除」という制度の内容を詳しく見ていきましょう。
災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合等には、所得税の計算上、一定の金額の所得控除を受けることができるとされています。これを「雑損控除」といいます。
本人や家族の保有する生活に通常必要な資産(住宅・家財・現金など)に限られており、別荘などの不動産や 1 個又は 1 組の価額が 30 万円を超える貴金属、書画、骨董など「生活に通常必要でない資産」は雑損控除の対象外となります。
「災害又は盗難若しくは横領」に限られており、この解釈について、過去の裁判例では「いずれも納税者の意思に基づかないことが客観的に明らかな事由」と判示されています。
よって、自らの意思に基づいてお金を渡してしまうような詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません。
次のいずれか多い金額が雑損控除となります。
なお、差引損失額とは、損害金額から保険金や損害賠償金等により補填される金額を除いた金額です。
今回のケースは、自らの意思に基づかない盗難に該当すると解されますが、全額が補償されているため、結果的に、雑損控除の適用はありません。
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