カルロス・ゴーン氏が引田天功さん(若い人は知らない)のイルージョンのごとく日本から脱出しました。そのゴーン氏の日本での逮捕容疑のひとつが有価証券報告書の虚偽記載(金融商品取引法違反)です。ゴーン氏が日産から実際にもらっていた報酬金額より少ない金額を有価証券報告書に記載したとする容疑です。この有価証券報告書とはどのようなものなのかを説明いたします。
主に上場会社が自社の経営状況などをまとめた報告書で、事業年度終了後 3 カ月以内に、本店が東京の場合は関東財務局に提出するものです。
主に投資家への情報提供を目的とした報告書になります。この有価証券報告書は金融庁のEDINET で誰でも見ることができます。
有価証券報告書には、詳細な決算書が記載されています。この決算書の正確性を担保するために監査法人の監査報告書も綴られています。監査報告書は、「この決算書は正しいですよ」とする公認会計士の意見表明です。
実際には、決算書だけでなく有価証券報告書の全体を監査法人はチェックしますが、個々の役員の報酬の真実性まではチェックしないと思います。
私が 30 年以上前に監査をしていた時は有価証券報告書に役員報酬の各人別の記載はありませんでした。
日産の 2019 年 3 月期の有価証券報告書には、報酬総額が 1 億円以上の役員として以下の 3 名の記載があります。
ゴーン 1,652 百万円、西川 404 百万円、志賀 161 百万円、中村 178 百万円。ゴーン氏が突出していますね。
日産を監査しているのが EY 新日本有限責任監査法人です。EY はアーンストアンドヤングで、その前身のアーサーヤングに私は 3 年半ほど勤務していました。
EY 新日本有限責任監査法人への監査報酬は864 百万円です。その他に海外の子会社等の監査報酬として 1,855 百万円を系列のアーンストアンドヤングに支払っています。
日産の地域ごとの売上高は、以下の通りです。
日本 1,904,712 百万円、北米 5,492,142 百万円、欧州1,657,339百万円、アジア1,318,704百万円、その他 1,201,350 百万円です。海外での売上がどれだけ重要かが分かります。
ちなみにホンダの 2 輪事業は、日本 79,297 百万円、北米 188,022百万円、欧州 159,645百万円、アジア 1,372,583 百万円、その他 297,757 百万円で、日本国内での売上は全体売上の 3.7%くらいしかありません。
以上のようなことが有価証券報告書から分かりますので、興味のある会社があればご覧になってください。
無断転用・転載を禁止します。