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相続登記と遺言

第306号 2019年11月

1.はじめに

相続登記とは、被相続人(故人)の不動産の所有名義を取得分に応じて相続人の名義に変更することです。遺言とは死後の財産の分配方法などを言い残すことで、これを文書にしたのが遺言書です。民法の改正で相続登記により遺言の効力が揺らぎ始めたとする記事が新聞にありましたので説明します。

2.相続財産の分け方

相続が始まると相続財産を相続人の間で分ける必要があります。遺言があれば遺言通りの分け方で相続財産を分けますが、遺言がなければ相続人が話し合って、分け前を遺産分割協議書という形で作成し、それに従って相続財産を分けることになります。

3.法定相続分

法定相続分とは、各相続人の相続財産の取り分を法律で定めた割合のことを言います。

配偶者と子が相続人の場合は、配偶者が 1/2 で子も 1/2 です。

配偶者と父母・祖父母などの直系尊属が相続人の場合は、配偶者が 2/3 で直系尊属が 1/3 です。

配偶者と故人の兄弟姉妹が相続人の場合は、配偶者が 3/4 で兄弟姉妹が 1/4 です。

4.法定相続分での登記

相続財産に不動産がある場合、たとえ遺言があったとしても法定相続人は、他の相続人の了解を得ずに相続人全員が法定相続分で取得したという登記をすることができます。つまり、相続人であれば法定相続分での登記が他の相続人の了承を得なくてもできてしまうのです。

5.具体例

子がいない夫婦の夫が「自宅はすべて妻に相続させる」という遺言を残していても、1/4 の法定相続割合を持つ夫の兄は、妻より先に自宅を妻が3/4、夫の兄が 1/4 とする登記をできます。そうすると、自宅の 1/4 は夫の兄名義となり、売却して第三者が自宅の共有者となることもあり得ます。

これでは妻がかわいそうです。

6.改正前は妻が取り戻せた

民法改正前は、妻が自宅の 1/4 の持ち分を買った第三者を訴えれば、その 1/4 の持ち分を自分のものにすることができました。最高裁が、「遺言があれば遺言が優先する」と判断していたからです。

7.改正後は取り戻せない

今年の 7 月の民法改正後では、「妻の法定相続割合である 3/4 を超える持ち分については、登記しないと第三者に権利を主張できない」とされました。つまり、妻は訴えによっても第三者から 1/4の持ち分を取り戻せないのです。

8.対策

夫が死亡して遺言がある場合には、不動産の相続登記は他の相続人より先にすることです。他の相続人は、一連の戸籍謄本を手に入れれば法定相続割合での登記申請ができてしまいますので、スピーディーな相続登記が安全です。

アトラス総合事務所では、税理士法人・社会保険労務士法人、そして総勢 12 名の司法書士法人スタッフが正確でスピーディーな登記手続きをやっておりますので、是非ご利用ください。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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