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不動産トラブル

第294号 2018年11月

1.はじめに

積水ハウスから 63 億円をだまし取った「地面師」事件が世間の話題となっていますが、不動産取引には様々なトラブルが発生しています。国土交通省も「不動産トラブル事例データベース」という専用サイトを設けています。そこでの事例と私が知っている実際に起こったトラブル事例を紹介します。

2.私道と市道

不動産の買主が、大雨で前面道路の排水に問題があるため、市役所へ対策を求めたところ、市道ではなく私道であることから対応できないとの返答です。売買契約時には市道との説明を受けていて、契約時の書類にも道路に関する誤った記載がありました。

3.競売開始物件の賃貸

競売とは、借入金の返済不能などの理由で、裁判所を通じて不動産を強制的に売却して、その代金を返済に充てる手続きです。

アパートが競売に供されていることを知っている媒介業者が、そのことを入居者に知らせないで賃貸契約の媒介をしました。入居者に対して、突然「新しい家主と契約を結ぶか、退去するか」の通知が入居後にあったということです。

4.滞納管理費、滞納修繕積立金

中古マンションの売買にあたり、契約時の書類には「滞納金については売主の負担とする」との記載はありましたが、その金額については記載がなく、また説明もありませんでした。買主が入居しようとしたところ、管理会社より売主が滞納していた多額の管理費と修繕積立金を請求されました。売主は 8 カ月も滞納していました。

5.事務所使用不可

法人の代表者が自宅兼法人の事務所として使用するために中古マンションを購入しました。大手の仲介業者で、事務所としても使用する旨を伝えていたにもかかわらず、入居後、管理組合の規約で購入したマンションが法人の事務所としての使用ができないことが分かりました。

最終的には仲介業者に非があったということで、買主が購入した金額で仲介業者が買い取りました。

6.サブリース契約の賃料

1棟のビルをサブリース契約(転貸を目的とした一括借り上げ)でバブル期に貸付けていたところ、バブルが崩壊して一括借上げしていた業者が逆ザヤになりました。業者の一括借上げ料が月額1,000 万円で、その転貸収入が月額 800 万円という状況で、毎月 200 万円の逆ザヤが業者に生じていました。業者は大手の不動産会社で、一括借上げ料の減額を再三申し入れてきましたが折り合わず、裁判になりました。

7.水道管が隣地を経由している

土地を購入する直前に、重要事項説明書の提示を求めたところ、実は水道管が他人の土地を経由して引いてあるとの説明を受け、新たに水道管を引くにはかなりの費用がかかると言われました。

そのような費用は負担できない旨を伝えると、売主負担で新たに水道管を引きました。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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