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不動産投資

第288号 2018年5月

1.はじめに

かぼちゃの馬車という女性専用のシェアハウスを運営する会社が経営破たんして、そのシェアハウスを購入した投資家が大変なことになっています。毎月保証された家賃が運営会社から入金されないため、銀行借入を返済できないからです。

2.サブリース

サブリースとは、不動産を購入した投資家から、その物件を一括して借り上げて、家賃を長期保証する契約形態です。大手では、大東建託や旭化成がサブリース事業をやっています。

サブリースのメリットは、空室リスクがなく、安定的な家賃収入が保証され、手間いらずなところにあります。

3.フルローンは危険

かぼちゃの馬車のシェアハウスは、土地と建物を合わせて1億~3億円くらいの高額物件です。この億単位の物件を銀行からの融資でほぼ全額を賄って取得しているようです。

家賃が保証され、億単位の融資を組んでも返済できるという触れ込みで取得したと思われますが、個人が投資物件をフルローンで取得するのはリスクが高いといえます。

物件価格の最低30%くらいは自己資金が必要ではないかと思います。家賃が下がったり、空室になって入金がなかったり、思わぬ修繕の支払があることが考えられます。一方、銀行借入金の返済額は、どんなことがあっても減ることはありませんので、借入金額は少しでも少なくすることが大切です。

4.銀行の功罪

かぼちゃの馬車の物件取得にあたって、融資をしていたのがスルガ銀行です。10年前のリーマンショック以後、銀行から融資をしてもらうのはなかなか困難になっていました。

その中で、億単位の高額物件に3%~6%くらいの高めの金利で融資をしていたのがスルガ銀行です。ノンバンクなら分かるのですが、地銀でしかもフルローンで融資をしていたスルガ銀行は、業界ではよく知られた存在でした。

報道では、銀行は融資に必要な書類が偽造されたものであることを知っていながら融資したと伝えられています。銀行が融資をしなければ、投資家が大変な思いをすることもなかったと考えると銀行の責任は重いですね。

5.利回り

投資物件を購入する場合、家賃収入の年額を投資額で割った利回りを考えます。年間家賃 500 万円、物件価格が1億円の場合、利回りは 500 万円÷1億円で 5%になります。

「公的年金はあてにならない」とか「銀行預金では利回りが 1%にもならない」といった具合に投資物件を勧められます。しかし、銀行預金は元本割れすることはありません。条件の悪い投資物件は売却時に元本割れのリスクがあります。いくら利回りが良くても、売却時に買った金額よりも安値でしか売れないのであれば、利回りもへったくれもないわけです。

この先物価は少しずつ上がっていくことが予想されますので、お金を物に換えておくことも必要かと思いますが、あまりにも景気の良い儲け話には乗らないことが肝要です。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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