税引前利益とは、法人の収益から費用を差し引いて求められます。税引後利益とは、その名のとおり、税引前利益から法人が負担する法人税等の額を控除した最終の利益金額で、ここでは税引後利益を当期利益と言います。
売上高が 1,000 で経費が 700 です。経費には、翌期に支払う従業員の賞与200が未払金として計上されています。未払金として計上された賞与は、税務上の要件を備えていませんので、今期は税務上経費となりません。実際に賞与を支払う翌期の経費となります。法人税等の税率は 30%とします。
売 上 高 | 1,000 |
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経 費 | ▲700 |
税引前利益 | 300 |
売上高 1,000 から経費 700 を差し引くと税引前利益は 300 となります。法人税等の額は、この税引前利益300に税務上経費とならない未払金として計上された賞与200を足した500に税率を乗じて計算されます。つまり、500×30%=150 が法人税等の金額となります。
売 上 高 | 1,000 |
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経 費 | ▲700 |
税引前利益 | 300 |
法 人 税等 | ▲150 |
当 期 利益 | 150 |
税引前利益 300 から法人税等 150 を引いた 150が最終利益である当期利益となります。
この決算書では税引前利益の 50%が法人税等として計上され、結果として当期利益も税引前利益の半額となっています。
法人が負担する法人税等の税率は 30%ですので、法人税等の額は税引前利益300の30%で90、当期利益は 300-90=210 となるべきです。
最終利益である当期利益は、株主配当の原資となりますので、この利益が不当に少なく計算されると株主が怒ります。「当期利益が少なくなると、株主配当が少なくなる!」と怒るのです。
当期利益を正しく表示するには、一工夫します。
決算書では経費として計上されているけれども、税金計算上は当期の経費として認められない賞与 200 に、法人税等の税率 30%を乗じた 60 を法人税等調整額として当期利益の前に計上します。
売 上 高 | 1,000 |
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経 費 | ▲700 |
税引前利益 | 300 |
法 人 税等 | ▲150 |
法人税等調整額 | 60 |
当 期 利益 | 210 |
すると当期利益は、税引前利益の 70%である210 にめでたくなりました。
これは、税効果会計と言う会計処理方法で、上場会社等の決算書では皆適用されています。上場会社の決算書をご覧になるときの参考にしてください。
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