電子書籍・音楽・広告の配信など、インターネットで世界中にサービスの提供をすることができます。国内事業者が国内向けにこれらのサービスを提供すれば、それは消費税の課税対象となります。
一方、国外事業者がこれらのサービスを日本国内に向けて提供する場合、国外事業者の所在地が日本にないことから消費税は課税されません。つまり、矢沢栄吉の音楽を国内事業者からダウンロードして購入すると消費税8%が掛りますが、国外事業者のサイトからダウンロードすると8%の消費税かからないという、不公平な状態となっています。
この問題を解決するために平成27年10月1日より、国境を超えた役務提供に係る消費税の課税が見直されます。
消費税はその取引が国内取引であれば課税され、国外取引であれば課税されません。現在は、役務提供を行う事業者の所在地が国内であれば国内取引、国外であれば国外取引とされています。
ですから、国外に所在地のある国外事業者の行う役務提供はすべて国外取引とされ消費税は課税されないのです。
国外事業者に消費税を課税するために、取引の内外判定基準を改正しました。役務提供を行う側の所在地ではなく、役務提供を受ける側の所在地で判定することになりました。
つまり、事業者が提供する矢沢栄吉の音楽を、所在地が国内にある事業者や消費者がダウンロードすれば、その取引は国内取引となり消費税が課税されるのです。
音楽を提供する事業者が国内事業者であろうと国外事業者であろうと、公平に消費税が課税されることになったわけです。
では、どのような取引が改正された消費税の対象になるのかというと、以下のようなインターネットサービスとなります。
日本に所在地がある事業者や消費者が、上記のようなサービスを国外事業者から受けた場合には、そのサービスに消費税が課税され、国外事業者は消費税の申告納税をしなければなりません。
しかし、事業所が国外にあることから、消費税の申告納税も工夫が必要となります。消費税の申告をしないケースや、申告をしても納税をしないことが考えられるからです。国内事業者であれば税務調査や財産の差し押さえなどは簡単にできますが、国外だとそうはいきません。
そこで改正法では、国外事業者がする役務提供が「事業者向け」か「消費者向け」かにより課税方式を異にしています。
国外事業者が日本国内の事業者向けに役務提供する場合には、役務提供を受けた国内事業者が国外事業者に代わって消費税の申告と納税を行います。
つまり、役務提供を受けた国内事業者が国外事業者に代金を支払う際に、消費税分だけ差し引いて支払い、そこで預かった消費税を税務署に申告納税するのです。
国内事業者がネット上の広告を国外事業者に270万円で依頼してサービスの提供を受けた場合、その支払いに際して消費税相当額20万円(270万円×8÷108)を差し引いた250万円を国外事業者に支払い、預かった20万円を消費税の申告に含めて計算して納税することになります(経過措置で、課税売上割合が95%以上の国内事業者や簡易課税事業者については申告納税が免除されます)。
この課税方式をリバースチャージ方式と言います。これなら税金の取り逸れはないですね。
なお、国外事業者はリバースチャージ方式の対象である旨の表示を行わなければなりません。
国外事業者が日本国内の消費者向けに役務提供する場合には、国外事業者に日本での消費税の申告納税義務を課します。
消費者向け役務提供とは、広く消費者を対象とした電子書籍・音楽・映像の配信や、事業者を対象としたものでも消費者の利用を制限していない役務提供も含みます。
消費者向けの役務提供といえども、国内事業者が役務提供を受けることもあるわけですが、経過措置により、当分の間、国外事業者から役務提供を受けた国内事業者は、課税された消費税について仕入税額控除を原則としてすることができません。
消費税は「預かった消費税」から「支払った消費税」を差し引いて納税しますが、この「支払った消費税」に含めることができないということです。国内事業者にとっては不利になります。
そこで、例外として、国外事業者が一定の手続きを踏んで「登録国外事業者」となれば、登録国外事業者に支払った消費税は仕入税額控除の対象となり、「支払った消費税」に含めることができます。
無断転用・転載を禁止します。