会計には、日々のお金の動きを処理する日常処理と、それらを一定期間で区切って集計処理する決算処理があります。決算処理は半期や年度での利益と財産額を確定することが目的になります。この目的を達成するために注意すべきポイントがありますので説明します。
日々の日常処理で売上代金が入金された時に売上を計上することは、会計処理の簡便化を図るという観点からはよく行われていることです。
しかし、決算処理においてはこのままではいけません。売上の計上は入金ベースではなく発生ベースで計上することが必要です。発生ベースとは、売上代金の請求権が発生した時点で売上を計上することを言います。
なぜ入金ベースではなくて発生ベースで売上を計上しなければならないのでしょうか?売上はそもそも商品やサービスを提供して、その対価を受取った時に計上すべきものです。会計では、この対価に現金や預金と同等の扱いで請求権(売掛金)も入るのです。つまり、請求権が確定した時点で対価の受取があったと見るのです。
ですから決算では、入金ベースから発生ベースにする追加手続きとして、請求権はあるけれどもまだ入金がされていないものとして売掛金を計上するのです。
しかし、売掛金を計上しても実際にお金が入金されないこともあります。売上を計上したのに入金がないとなると事業者にとっては大打撃です。売上代金が回収できないばかりか、売上計上したことで利益が増えて納税が発生するからです。
せめて、計上した売上をないことにしたいところです。しかし、一度計上した売上は代金が回収できないからといって取り消すことはできません。
このような場合の手続きとして貸倒れの処理があります。貸倒れの処理とは、計上してある売掛金を、回収不能として損失に計上することを言います。
しかし、何度も督促して回収できないからといって、機械的に売掛金を全額貸倒損失にすることはできません。その取引先が風前の灯火ならまだしも、取引先が元気でただお金を支払わないとなると厄介なことになります。
その取引先に債権放棄通知書を送って「もう貴社に対する請求権を放棄する」と意思表示をしても、この手続きにより貸倒損失として計上するには、その取引先が債務超過の状態にあって、それが相当期間継続していることが必要なのです。
債務超過の状態にない元気な取引先に対して債権放棄通知書を送ると、その取引先に対して寄付をしたとされることがあります。つまり、「元気な取引先から努力すればもらえるお金をもらわずにくれてやった」と税務上は考えるのです。
決算処理では、取引先ごとの売掛金の回収可能性を吟味して、貸倒れの処理の検討をする必要があります。
日常処理では仕入代金や経費の支払などを金銭の支払い時に計上する方法を採っていることはよくあります。この場合、決算処理では売上と同様に仕入や経費を発生時に計上する発生ベースの会計処理が必要となります。
発生ベースで仕入や経費を計上するタイミングは、支払義務の確定時点です。商品が納品されればその時点で仕入代金の支払義務が発生し、修繕工事を業者に依頼して、それが終了すれば、これもその時点で支払義務が発生します。つまり、代金を支払っていなくても商品が納入されたり、修繕をやってもらったりした時点で、仕入や修繕費を買掛金や未払金といった科目で計上する必要があるのです。
ですから決算日時点で、物が納入されたり、サービスの提供が済んでいるけれども、まだ支払いが行われていないものを集計して、買掛金や未払金で計上するのです。
買掛金や未払金を計上していても、取引先から請求がないことがまれにあります。何とも呑気な取引先ですが、おそらく取引先の事務処理が混乱していることが原因として考えられます。
商品の仕入代金は、法律上2年で時効になります。時効になれば取引先から仕入代金を請求されても、「もう時効にかかっているから支払い義務はありません」と言って支払いを拒絶することができます。
このような買掛金や未払金がないかどうかを決算処理で検討して、今後請求される可能性がない買掛金や未払金については、それらを消去して債務免除益として計上することが必要となります。
在庫を持つ商売では、決算日現在で在庫の棚卸をする必要があります。棚卸をするにあたっても、単に数量だけを数えるのではなくて、在庫そのものの販売可能性や使用可能性も検討しましょう。もう販売できそうもない在庫や使えそうもない在庫があれば、一定の基準を設けて評価損を計上することも可能ですし、廃棄処分も検討することが必要です。不良在庫をそのままにしておくよりも、評価損や廃棄損(決算日までに廃棄が必要)を計上して税金の負担を少なくした方が得策です。
決算日現在で所有する固定資産の棚卸もしましょう。固定資産台帳に記載されている資産と実物とを照合して、すべての固定資産が台帳に記載されているかを確認します。
固定資産には有姿除却という制度があります。たとえ破砕や廃棄等をしていなくても、今後事業の用に供する可能性がない固定資産については除却損を計上することができます。
また、ソフトウエアについても、物理的な除却や廃棄等がない場合であっても、対象業務の廃止やオペレーティングシステムの変更等により、今後使用することがないことが明らかな場合は、除却損を計上することができます。
事務所は年末が26日、年始は5日よりとなります。本年は大変お世話になりました。
よい年をお迎えください。
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