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管理組合が法人税

第245_1号 2014年10月

1.はじめに

マンションの屋上に携帯電話の基地局を設置したことにより、マンションの管理組合に対して法人税が課税されているとの報道がありました。管理組合に法人税がかかるなんて意外な感じがすると思いますが、その仕組みについて説明します。

2.人格なき社団

マンションの管理組合は人格なき社団として扱われています。「人格なき」とは、法律に基づいて団体に与えられる法律上の人格がないということです。法律上の人格がないとは、権利義務の主体となる資格がないと言うことです。つまり、株式会社のように登記された法人格を持っていない団体ということです。

3.法人税が課税されます

人格なき社団は、何もしなければ法人税を課税されることはありません。つまり、マンションの管理組合も管理業務だけをやっていれば法人税とは無縁です。人格なき社団が法人税の対象となるのは、法人税法上の収益事業を行って所得が発生している場合です。

法人税法上の収益事業とは、販売業、製造業その他の一定の事業で、継続して事業場を設けて行われるものを言います。

4.不動産貸付業に該当します

マンションの屋上に携帯電話の基地局を設置して携帯電話の会社から収入を得ることは、不動産貸付業として法人税法上の収益事業に該当します。したがって管理組合は法人税の申告納税義務が生じることになるわけです。

5.駐車場の扱い

マンションに設置された駐車場の利用率がマイカー離れなどで低下しています。そこでマンションの駐車場を区分所有者以外に貸し出すケースが出てきています。

駐車場の貸し出しも駐車場業として法人税法上の収益事業に該当します。しかし、マンションの管理組合がその管理業務の一環としてマンションの区分所有者を対象として行う駐車場業は収益事業に該当しない扱いとされています。つまり課税の対象とされていません。

一方、空いている駐車場を区分所有者以外の第3者に賃貸した場合には税金の問題が発生します。ケース別に税金の取り扱いが定められていますので、以下説明します。

6.すべて課税されるケース

駐車場の募集を広く行い、利用者を区分所有者に限定しないで申し込み順として、使用料金や使用期間などの貸出し条件において区分所有者とそれ以外とで差異がないケース。

このようなケースだと、もはや単なる市中の有料駐車場と変わらず、駐車場の運営自体が区分所有者のための共済的な事業とはいえないことから、区分所有者と非区分所有者の使用を含めた駐車場使用のすべてが駐車場業として収益事業に該当します。

7.非区分所有者の分だけ課税されるケース

区分所有者の駐車場の使用希望がない場合のみ非区分所有者への募集を行い、貸し出しを受けた非区分所有者は、区分所有者の使用希望があれば、早期に明け渡すように契約で定められているケース。

このケースは、区分所有者のための共済的な事業と、駐車場の余剰スペースの有効活用という二つの事業が同時に行われています。

税務上は、区分所有者の使用は共済的な事業として非収益事業と扱われ、余剰スペースを活用した事業だけが駐車場業ということで収益事業として課税されます。

8.すべて課税されないケース

区分所有者の使用希望がない場合であっても、非区分所有者に対する積極的な募集は行わず、空き駐車場があった場合にのみ短期的な非区分所有者への貸出しをするケース。

このケースは、臨時的かつ短期的な貸出しに過ぎず、非区分所有者への貸出しは独立した事業とはいえません。

したがって税務上も、非区分所有者の駐車場使用による収益は、区分所有者のための共済的な事業を行うに当たっての付随行為とみることができるとして、すべて非収益事業として課税の対象としていません。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士・行政書士 井上 修
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