「勘定合って銭足らず」という言葉があります。利益は出ているのにお金が足りない状況を表している言葉です。
売上代金を回収して、それを仕入代金として支払い、残ったお金で人件費や家賃などの固定経費を賄います。そこで賄えれば資金は増えていきますが、賄えなければ資金はショートしていきます。
商品を掛けで仕入れて、その支払い条件が「商品を仕入れてから1か月後」で、その商品を掛けで販売して売上代金の回収が「商品を納品してから1.5か月後」、商品の粗利は売上代金の2割で、売上代金の8割が仕入値であったとします。
商品を販売して1か月で1,000万円の売上があがりました。仕入代金800万円は1か月後に支払いますが、売上代金1,000万円の入金は1.5か月後になります。
そうすると0.5か月分だけ仕入代金の立替が生じて資金が必要になります。商売を始めた当初の立替は資本金として預け入れた資金で工面すれば資金はショートすることはありません。
そして、売上も1,000万円のまま推移すれば1,000万円の2割の粗利(200万円)で固定費を賄うことになります。
月1,000万円の売上が突然2,000万円増加して売上は3,000万円になりました。仕入も増加した売上2,000万円の8掛けの1,600万円増加し、その0.5か月分である800万円の立替が発生します。
増加した粗利は400万円(増加した売上2,000万円×0.2)で、毎月資金は400万円増えますが、仕入の立替が800万円増えるので、差引資金は400万円ショートします。
月に増加した売上の20%が粗利として資金が増えますが、同時に増加した売上の80%だけ仕入代金が増えます。そして、その0.5か月分だけ仕入代金の立替になるため、資金がショートします。
つまり、増加売上の20%資金が増えて、増加売上の40%(80%×0.5か月)だけ資金がショートするのです。
すなわち、売上が増加すると、その20%(40%マイナス20%)分だけ資金はショートすることになります。
これが「勘定合って銭足らず」の原因です。このような場合には、その分を融資によって資金調達する必要があるのです。
売上が増えると資金が足りなくなるのは普通なことなのです。
このように、売上代金と仕入代金の決済条件は、資金繰りに当たって大切なポイントとなります。仕入先と得意先との決済条件を決める際には粘り強い交渉が必要と言えます。
ちなみに現金商売であれば、常に入金が支払より先ですので、売上が増えれば増えるほど資金は潤沢になります。
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