脱税はいけませんが、合法的な節税はしても何も問題ありません。節税といっても「ではどのくらい得になるのか?」というと、ただ「税金が安くなります」とだけ言われて、「そうなんだ」で終わるケースが多いと思います。今回は、具体的に「これくらい安くなる」を解説します。
2年落ちの中古のポルシェを1,000万円で期首に購入して、期末に900万円で売却したケースです
2年落ちの中古車の耐用年数は、4年となり、定率法の償却率は0.5で、減価償却費は500万円計上されます。500万円に法人の税率38%を乗じると190万円法人の税金は安くなります。期末にポルシェを900万円で売却すると900万円-500万円=400万円が売却益となり、法人の税金が152万円生じます。税金は190万円-152万円=38万円安くなりますが、キャッシュフローを見ると以下のとおりとなります。
ポルシェ購入代金 | △1,000万円 |
ポルシェ売却代金 | 900万円 |
減価償却による税金減 | 190万円 |
売却による税金増 | △152万円 |
△ 62万円 |
中小企業の場合、役員報酬を増やせば会社の利益が減り、役員報酬を減らせば会社の利益が増える相関関係にあります。
役員報酬額に対する個人の税金の割合はおおよそ次のようになります。
役員報酬額 | 個人の税 | 税金の割合 |
---|---|---|
500万円 | 52.7万円 | 10.5% |
1,000万円 | 183.9万円 | 18.4% |
1,500万円 | 375.3万円 | 25.0% |
2,000万円 | 593.8万円 | 29.7% |
2,500万円 | 842.1万円 | 33.7% |
3,000万円 | 1,096.3万円 | 36.5% |
3,500万円 | 1,350.5万円 | 38.6% |
4,000万円 | 1,604.7万円 | 40.1% |
法人の税率は38%ですので、役員報酬が3,500万円でトントン、それ以下であれば、法人の税金より個人の税金が安いので、法人個人の税金をトータルすると得になり、逆にそれ以上であればトータルの税金の負担が増えることになります。
役員報酬を2,000万円10年間支払う場合と、役員報酬を1,000万円10年間支払って、10年後に退職金を10,000万円受け取る場合の税金を比較してみます。
役員報酬2,000万円の個人の税金は、593.8万円で、10年間で5,938万円となります。一方、役員報酬1,000万円の個人の税金は183.9万円で、10年間で1,839万円となります。勤続10年で10,000万円の退職金にかかる個人の税金は2,154.8万円になります。
すると、1,000万円の役員報酬10年の個人の税金1,839万円と退職金の税金2,154.8万円の合計は、3,993.8万円となり、2,000万円の役員報酬10年の個人の税金5,938万円より1,944.2万円安くなることになります。役員報酬も退職金も法人の経費になりますので10年間トータルでの法人の税金は変わりませんが、役員報酬を1,000万円にする方が、法人税を早いタイミングで支払っていくことになります。
設備をリースで設置をしても、現金で購入して設置しても、現行の税制ではいずれも減価償却により費用化されるため、税金の損得は原則としてありません。
では、両者の違いは何かというと、キャッシュフローで両者に違いが出てきます。リースではリース期間に亘ってキャッシュが出ていきますが、購入の場合は購入時にキャッシュが一度に出ていくことになります。
経営セーフティ共済とは、得意先の倒産等による売上代金の貸し倒れに備えて、毎月掛金を支払うことにより、いざという時に掛金総額の10倍に相当する額の貸付を無利息、無担保・無保証人で受けられるという制度です。
掛金は月額最高20万円で法人の損金になり、累計で800万円まで掛けることができます。また、解約も自由で、掛金を40ヶ月以上掛けると、解約しても今まで掛けていた掛金が全額戻ってくるといった優れものの制度です。
それで、この制度を本来の趣旨とは違う節税目的で利用しています。掛金を支払うことで法人の利益を圧縮でき、解約による返戻金は会社の益金となりますが、納税の先延ばしをすることができるわけです。
掛金は最大で毎月20万円、年額で240万円、累計で800万円まで掛けることができますので、800万円×38%=304万円の法人の税金をセーブすることができます。
法人税率は長期的に低下傾向にありますので、今の高い法人税率の時に掛けて、将来の低くなった法人税率の時に解約すれば、その差額は得になります。現在、復興法人特別税が課されて法人の税金は38.01%となっていますが、2015年4月1日開始事業年度からは、復興特別法人税がなくなるため法人の税率は35.64%と2.37%下がりますので、この2年間で720万円の掛金を掛ければ(3月決算の場合で、2013年の4月から月20万円掛けて、2015年3月で翌1年分を前払いする)、それだけで170,640円の節税になります。
個人事業者や会社役員の退職金制度としてあるのが小規模企業共済です。
個人で月額最高7万円の掛金を掛けることにより、事業廃止や役員退任時に一時金が個人に支給されるものです。掛金は個人の所得控除となり、一時金は退職所得となるので税金が有利になります。
役員報酬2千万円の役員が月額7万円、年額84万円の掛金を掛けると、個人の税金が約25万円安くなり、30年掛け続けると750万円安くなります。この場合に30年経って給付される共済金は約3,000万円で、この共済金は退職金扱いで納める個人の税金は約186万円です。かなり税金が有利になることがわかります。経営セーフティ共済も小規模企業共済も当事務所で加入手続きをすることができます。
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