会社には、給与や報酬などを支払う際に所得税を控除して会社が納税するという源泉徴収義務があります。給与にかかる源泉徴収が一番わかりやすいのですが、様々な支払いでこの源泉徴収が必要になってきますので、以下説明いたします。
海外の法人に対してライセンス料を支払う場合には、支払額の20%(25年からは20.42%)の源泉徴収が必要になります。ただし、アメリカやイギリスなどは、租税条約により一定の届出をすれば免税になる取り扱いをしています。一定の届け出とは、「租税条約に関する届け出書」と「特典条項に関する付表」と「居住者証明書」を所轄の税務署へ提出することです。
踊りや楽器演奏などをする郷土芸能保存会に出演料を支払う場合、この保存会が単なる個人の集合体であるのか、そうではなくて団体であるのかにより源泉徴収の扱いが異なります。
団体としての組織を備え、多数決により団体としての判断が行われ、代表の選任方法、総会の運営、財産の管理方法などが組織により確定している場合は、団体として扱われ(人格なき社団として税務上扱われる)、源泉徴収は不要となります。
一方、個人の集合体と判断される場合は、個々人に対する報酬として源泉徴収の対象となります。
なお、団体として人格なき社団と税務上扱われる場合は、法人税の申告義務があることになります。
サルが学校の生徒として面白い受け答えをしたりしてテレビに出ていますが、このサルに出演料を支払う際に源泉徴収が必要かどうかは、サルが個人事業者の猿回しに雇われているか、法人事業者に雇われているかによります。法人事業者の場合は源泉徴収する必要はありませんが、個人事業者の場合は源泉徴収が必要になります。
出演料はサルに払うものでなく、事業者に払うことになるからです。
おおむね5万円以下の賞金であれば、源泉徴収をしなくても問題ありません。新聞、ラジオ、テレビの読者や視聴者の投稿原稿やビデオの提供者に支払うお礼も同様の扱いです。
同じ10万円の報酬をもらっても、プロレスラーは10%源泉徴収されて手取りが9万円、一方プロボクサーは10万円から5万円控除した額に10%の源泉徴収がされます。つまり、10万円-5千円=9万5千円が手取りになります。プロボクサーだけなぜ報酬から5万円を引いて源泉徴収するのかよくわかりません。おそらく安いファイトマネーにいちいち源泉徴収するのが煩雑だからでしょうか。
(Q&Aメディア、エンターテイメントビジネスの税務、久川秀則著、大蔵財務協会 参照)
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