会社の業績悪化などの理由で労働者に退職をしてもらいたい時の対応としては、希望退職を募ったり、個人別に退職勧奨をしたり、更には解雇ということが考えられます。
希望退職によっても計画した人員整理ができない場合は、個人別の退職勧奨か解雇ということが考えられますが、解雇となると労働者とのトラブルが避けられません。
そこで退職勧奨となるのですが、最近読んだ本にロックアウト型退職勧奨という方法が載っていました。かなり強烈な方法ですが、参考までに紹介します。
希望退職も退職勧奨のひとつですが、退職勧奨とは、会社から労働者に強制を伴わない退職の働きかけを行うことです。いわゆる昔から言われている「肩たたき」のことです。
「会社もこんな状態だから退職を考えてもらうと・・・」という具合に会社が労働者に退職勧奨をします。労働者がこれを受け入れれば問題ないのですが、拒否した場合には、会社は労働者に自宅待機を命じ、賃金も普通どおりに支払います。
賃金さえ支払えば会社は労働者に仕事をさせなくてもかまわないということです。労働者が、会社に行って仕事をする権利を主張しても、裁判所はそれを認めないのが裁判例です。
会社は、1ヶ月以内に退職すれば退職金を100%上積みするけれども、1ヶ月を過ぎて2ヶ月以内なら上積み分は50%に減額する、などの退職勧奨に応じた場合の退職時期別の条件提示をします。
自宅待機を命じられた労働者は、周囲から冷たい目を向けられることで精神的に追い詰められていき、退職までに時間をかければかけるほど退職条件が厳しくなります。そして遂にその状況に耐えられなくなって、辞表を提出するというものです。
この方法は、外資系企業でリーマンショック後に多く利用され、結果として対象となった労働者のほとんどの方が退職しているようです。
インターネットを見ると、ある日突然退職勧奨をされ、それを拒否すると自宅待機を命じられ、翌日会社に行くと入り口で今までいなかった警備員が立っていて、今までなかった社員カードの提示を求められて会社に入れなかったという中小企業での実例が載っていました。この方法は規模の大きい外資系企業だけでなく、中小企業でも利用されつつあるようです。
この方法について争われた裁判例は、著者の知る限りまだないとのことです。
向井蘭著「社長は労働法をこう使え!」ダイヤモンド社
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