役員退職金は、高額な金額を支払うことが可能であるとともに、会社の損金になり、かつ、退職金を受け取った役員個人の所得税・住民税が優遇されているところから、節税の切り札ということがいえます。
この税金が有利な役員退職金に改正がありました。勤続年数が5年以下の法人税法上の役員や公務員・議員が対象です。
所得税や住民税の課税対象となる退職所得は、(退職金-退職所得控除)×1/2で計算されますが、勤続年数が5年以下の役員等に関しては「×1/2」が廃止されます。つまり、(退職金-退職所得控除)が退職所得とされます。
勤続年数が5年で2,000万円の退職金をもらった場合、改正前では225万円の税金が、改正後は620万円の税金となります。
法人税法では、退職した役員に不相当な高額退職金を支払った場合には、相当と認められる金額を超える部分の金額を会社の損金としないと規定しています。
では、相当な退職金はどのくらいなものかということですが、裁判での判決例から、次のような計算式が一般に使われています。
「退職時報酬月額×勤続年数×功績倍率」
功績倍率は社長で3倍、取締役で1.8倍くらい。
退職時の報酬月額が100万円で、勤続年数が30年の社長の退職金は、
100万円×30年×3倍=9,000万円
と計算されます。
社長個人の退職金にかかる所得税と住民税は1,557万円ですので、7,443万円が手取りとなります。
この退職金の計算方式を功績倍率方式と言いますが、この方式によると退職時の役員報酬の額により退職金額は大きく変わります。
会社の経営状態の悪化等の理由で、役員報酬を月額10万円といったように低く設定していた場合には、功績倍率方式では役員退職金額は極端に少なく計算されてしまいます。
このように特殊な事情で退職時の月額報酬が極端に低額の場合には、退職役員の職務に応じた適正月額報酬を見積もって、功績倍率方式により役員退職金額を求めることができます。
役員退職金は高額になりますので、退職時にすべての金額を支払えないケースもあり得ます。5,000万円を退職時に支払って、残りの4,000万円は4年間で分割払いすることも可能です。退職時に4,000万円分を未払金として計上すれば、退職時に9,000万円の退職金を会社の損金とすることもできますし、5,000万円を退職時の損金に、残りの4,000万円を分割支給時の損金とすることもできます。
将来支給する役員退職金に備えるために生命保険に入って、退職金原資を積み立てておくことも必要です。当事務所では保険の代理店をやっておりますので、担当者にご相談ください。
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